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防災・減災 技術レポート!浜からビジョン

最前線の防災・減災技術、最先端のテクノロジー、産業界の最新トレンドを紹介します。

互いに唯一無二の技術を携えて、世界市場の席巻へ。
南相馬モノづくり企業とグローバルベンチャーが共創

2020年03月31日

VISION「浜からビジョン」

塩澤駿一

塩澤 駿一さん

テラドローン株式会社 プロダクト開発部門 マネージャー

1993年生まれ、千葉県出身。早稲田大学基幹理工学部機械科学・航空宇宙学科卒業後、同大学院2年時にドローンに搭載するタイプのレーザー測量機器テラライダーの研究を開始。卒業後はドローンサービスを行うテラドローンに就職しプロダクト開発部門を立ち上げる。同年、福島県に工場を置く菊池製作所とテラライダーの開発・生産を始める。2019年よりフェアスカイと共同開発を開始。

星山晃一

星山 晃一さん

フェアスカイ株式会社 取締役、株式会社星山工業 専務取締役

1977年生まれ。福島県出身。高校卒業後、千葉県の大学に進学。音楽活動を開始するも23歳で肺気胸を患い手術を経験。福島県南相馬市に戻り父親が社長を務める星山工業に入社。福島第一原発内の機械管理等を行う。東日本大震災後、廃炉作業や除染作業に携わる一方、新規事業の立ち上げを模索。工学博士の杉山和夫氏と出会い、ドローンの開発を事業とするフェアスカイを立ち上げる。

ドローンサービス企業ランキングで世界2位(※)。世界有数のドローンテックカンパニーであるテラドローン社が測量機器開発のパートナーに選んだのが、南相馬市のモノづくり企業・フェアスカイ社だ。しかし、2019年に立ち上がったばかりのフェアスカイの実績はないに等しい。ではなぜ選ばれたのか。その強みとは何か。そして、共創する両社が見据える世界とは。テラドローンでドローン事業を率いる塩澤駿一さんと、フェアスカイ 取締役の星山晃一さんにうかがった。
※ドローンの市場調査をする世界的機関「DRONEII」社調べ。「ドローンサービス企業 世界ランキング2019」にて、産業用ドローンサービス企業として「世界2位」の評価

福島県南相馬市小高区。ロボット開発で著名な菊池製作所の一角に、世界の測量業界が注目するベンチャーテック企業・テラドローン社がそのR&D部門を構える。これから始まるインタビューを前に、作業台には組み上がったばかりのUAVレーザー測量機器「テラライダー」が据え置かれている。

「今、業界内外から大きな期待を寄せられているのが、UAVレーザー測量という技術です。これは、ドローンに載せた機器で地上から地表に向けてレーザー光線を連続で照射し、その照射距離から地表の状態を計測する方法。当然ながら、ドローンは常に空中で動いているので、その動きを計算に入れなければ正しく距離を測ることはできません。でもこのテラライダーなら、GPSを使って位置や機体の傾きを計算し、1cm単位のずれ、0.05度の姿勢の傾きも把握して計算。超高精度な地図を作ることができます」

テラライダーを使って得られたデータを基に描いた3次元地図

テラライダーの開発者で、テラドローンのドローン事業を推進する、塩澤駿一さんが説明してくれる。

「低価格なのも、大きな優位性だと思います。一般的なUAVレーザー測量機器は、姿勢を測るために高価なIMUという装置を使っています。対してテラライダーは、6つのGPSを配置し姿勢を算出しています。IMUが不要なので、市販されているUAVレーザー測量機器の半分か3分の1程度の価格に抑えられます」

ちなみに、6つのGPSを配する構造は特許を取得しているという。2018年に菊池製作所と一緒に製品化を進め、2019年5月に販売を開始。測量業界が注目し、わずか10カ月足らずで出荷台数は30台超に伸びた。業界では、異例の売れ行きという。

テラライダーを組み立てる塩澤さん(右)と星山さん。
右の写真が組み上がった長い腕を6本持つ機体。腕のそれぞれの先端にはGPSが配されている

わずか「2mm」の分岐点。
軽量化ドローンで世界需要をつかむ

順調な滑り出しにも見えるが、塩澤さんは満足していない。「お客様の期待に応えるためには、もっと軽量化して長時間飛行を実現したい。たどり着けない目標ではありません」と、前を向く。

この軽量化という課題に塩澤さんと共に挑んでいるのが、同じく福島県南相馬市に本社を構える星山工業の社内ベンチャー・フェアスカイ社だ。

「企業といっても、まだ社員はおらず、社長と取締役の私の2人で切り盛りする小さな会社です」と取締役の星山晃一さんは、少し自嘲気味に笑顔で説明する。一見して、憎めない人柄がにじみ出る。

「社長は、埼玉大学の工学部で助教授を務めた杉山和夫です。杉山は化学、材料工学の専門家で、その知見と人脈をもとに当社では、2017年から福島イノベーション・コースト構想関係の補助金(地域復興実用化開発等促進事業費補助金)を得て、ドローン用の超軽量機材および小型燃料電池の開発、それによる飛行時間の延長に取り組んでいます。2019年夏からはテラドローンさんと協業し、炭素繊維部材を用いてテラライダーの軽量化に取り組んでいます」

現行のテラライダーは、重さが3.8kg。腕は外径25mmのパイプで、パイプ内にはGPSケーブルが通っている。

「この腕の部材を当社が開発した高強度・高弾性CFRP(炭素繊維強化プラスチック)パイプに置き換えることで、強度を保ったまま軽量化を実現できます。2回の試作を経て、2020年2月に外径14mmのパイプが完成しました」

14mmは、GPSコネクターがちょうど入るサイズだ。「もう、これ以上細くして軽量化する必要はないでしょう」と、星山さんが言い切る。

塩澤さんも納得顔だ。「飛行時間を長くするには、テラライダーの重量を軽くしたい。具体的には、3kg以下に落とすと、もう1ランク小さなドローンに搭載することも可能です」。現在は、ワンボックスカーでの携行移動が必須だが、いずれは大型キャリーケースでの携行も見込んでいるという。2020年夏までに高強度・高弾性CFRPパイプを実装して試作機を作り、2021年3月末までには販売を開始する構えだ。

直径14mmの高強度・高弾性CFRPパイプ。一般的なGPSコネクターがちょうど入るサイズで量産する

両社を結びつけた福島イノベ機構。
スピードに応える、軽快なフットワーク

両社の出合いは、2019年春。テラドローン社の塩澤さんが福島イノベーション・コースト構想推進機構(以下、福島イノベ機構)のスタッフに、「強くて細くて軽い素材が欲しい」と相談したところ、「ちょうどいい会社がある」と紹介されたそうだ。

「テラライダーを軽量化するには炭素繊維しかないと考えていました。そこで福島イノベ機構さんに紹介してもらってお会いしたのが、星山さんです。『できますよ』と即答してくれて、実際に数日後には試作品を持ってきてくれたんですよ」

当初、塩澤さんは外径18mmに縮小できれば十分だと考えていたという。しかしフェアスカイの杉山社長が「もっと小さくなる」と判断し、予想を上回るテンポで14mmにまで下げたことにも驚かされたそうだ。

「ベンチャー企業はスピーディーな開発が求められます。そのスピード感を理解してくれるのは非常にありがたいですね」

照れたように星山さんが「小刻みに動くことは得意です」と、話を引き取る。

「当社の親会社の星山工業は、もともと福島原子力発電所のプラント事業を請け負う会社でした。しかし東日本大震災を機に仕事が一変し、廃炉作業や周辺の除染作業が中心になりました。南相馬も、“放射能”というネガティブなイメージを持たれるようになってしまった」

そこで父親である星山工業の社長と、浜通りの活性化に資する新規事業を探す過程で、杉山現社長と知り合ったという。

「杉山社長からドローンの軽量化の研究を聞き、すぐに出資を決めました。当時は浜通りでもドローンを手掛ける企業が増え始め、星山工業も関心があったことが背景にはあります。それにドローンや素材について勉強させてもらい、いずれは新たなサプライチェーンを開拓したいという狙いもあった。“杉山先生と一緒に進もう”という思いでした」

ここから、星山さんの学習が始まった。炭素繊維や半導体について本を読み漁り、幾つもの技術センターやメーカーを訪ねて実習をさせてもらったという。

知見を蓄え、杉山社長との研究が進む中で事業部門を分社化。フェアスカイの誕生だ。そんな時期に、福島イノベ機構を通じて、テラドローンの紹介を受けた。

「やりがいのある事業だと思いました。早く形にしたい思いで取り組みました」

浜通りで成長を果たそうという覚悟と、経験がないからこそ目の前のことに集中する意気込みが、塩澤さんの信頼を手繰り寄せたといえそうだ。

「技術研究が専門の大学の先生と、最終的に量産化して事業化するメーカーでは、開発段階でその考えがずれてしまうケースも少なくありません。でもそこを星山さんは、我々メーカーの意図をうまくくみ取って開発現場に伝えてくれます。意思疎通が早くなる点も助かっています」

塩澤さんが、照れるようにはにかむ星山さんを横目に、そう補足してくれた。

技術とスピード。塩澤さんの言葉からはフェアスカイへの信頼が感じられる。
右の写真は、フェアスカイの高強度・高弾性CFRP製品の一例

「ここから、日本を元気にする」。
世界を目指す俊英と、南相馬の事業家の共通目標

塩澤さんは早稲田大学基幹理工学部の出身。大学院2年時にUAVレーザー測量機器の研究を始める一方、インターンシップ生として3カ月間、テラドローンで働いた。

「入社してすぐに、世界を視野に入れた勢いのある会社だと分かりました。でもドローンを使ったサービスを提供するばかりの会社で、当時は社内に私のような技術者がいませんでした。ここに技術者として入ったら面白そうだと考え、飛び込みました」

飛び込むことに、不安はなかったか。この年、約170人いる院生同期の中で、ベンチャー企業に就職する人は塩澤さん1人だったという。

「そこの不安はまったくなくて。関係ないのかもしれませんが、子どもの頃、NHKの『プロジェクトX』を見て育ったんですよ。日本のモノづくりは素晴らしいと、メディアから教育を受けていたのかもしれません(笑)。でも僕が高校生になった頃には、日本製品、日本メーカーは世界でも劣勢になっていた。そのギャップが悔しくて日本のモノづくりを変えたいと思ったんです。ドローンなら間違いなく世界に勝てます。インターンのときにそう確信できたので、この会社で挑戦することに迷いはなかったですね」

産業用ドローンが活躍する世界をつくる――。現在の目標をそう語る塩澤さんには、もう1つ、大きな目標があるそうだ。

「優秀な学生がベンチャーに入って世界を目指す。それが当たり前になるといいなと思っています。大企業ばかりではなく、ベンチャーで働くという道があることを、母校の高校生に伝えることも1つの目標です」

塩澤 駿一さん(テラドローン株式会社 プロダクト開発部門 マネージャー)

一方の星山さんは、大学で英米文学を学ぶ最中に音楽活動に身を投じたという変わり種。26歳で実家に戻って初めて家業に向き合ったそうだ。

「最初は仕事が分からず社員に引っ張ってもらうばかりでした。今、フェアスカイで開発に携わることはとても楽しいのですが、それができるのも現場で社員が稼いでいるおかげです」

だからこそ、社員に恩返しをしたいのだという。

「軌道に乗ったら、星山工業のドローンに興味を持っている社員をフェアスカイに入れたい。そうして、やる気があれば興味を追求できる会社であることを示したい。やがては“面白そうな会社があるから、南相馬で働いてもいい”と思ってくれる若者が増えればうれしいですね」

歩んで来た道は異なるものの、次の世代の発展を願う両者の視線は、ひとつに重なっている。

「南相馬の技術と、ベンチャーの発想が一体となって、世界をアッと驚かせるような製品を作っていきたいです」(星山晃一さん)

テラドローン株式会社

「空から、次の産業革命を起こす」が事業コンセプト。空撮、測量、点検、データ分析、運行管理などの産業向けドローンサービスを国内外で提供している。Terra Groupは日本が世界に誇る技術分野で、設立当初からグローバル市場で戦うことを前提に創業された企業集団。新しい市場を生み出しリードできる存在になることで、日本発のベンチャー企業が世界で通用することをもう一度証明する野心を持つ。

フェアスカイ株式会社(株式会社星山工業)

星山工業のドローン事業部を分社化するかたちで設立。ドローン用超軽量機材と小型燃料電池システムを導入した次世代開発にチャレンジする。地域復興実用化開発等促進事業費補助金(令和元年度)に採択され、現在、「ドローン用超軽量機材と小型燃料電池システムの開発」に取り組む。

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