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防災・減災 技術レポート!浜からビジョン

最前線の防災・減災技術、最先端のテクノロジー、産業界の最新トレンドを紹介します。

空から始まる21世紀の産業革命
国産ドローンで世界市場へ挑戦

2021年03月02日

VISION「浜からビジョン」

佐藤 良一

曽谷 英司さん

イームズロボティクス株式会社 取締役 事業戦略担当

大阪府出身。明治大学商学部卒業後、日立グループのIT系企業に就職。2015年、ロボット事業の立ち上げ責任者として、ドローンビジネスの世界へ。国内外にわたる事業展開から、各事業会社との協業推進、営業活動を行う。2018年7月、イームズロボティクスに転職。2020年6月より取締役に就任。同社の事業戦略責任者として、日本各地を奔走。

ドローンの登場によって、日本の産業が大きく変わろうとしている。2022年度をめどに、経済産業省を中心に、「レベル4(都市上空など有人地帯で目視外飛行させることができる)」の実現に向け、制度設計や法整備などが進められている。農業や測量、物流など、産業用ドローンに特化した開発を行うイームズロボティクス株式会社の取締役であり、事業戦略を担当する曽谷英司さんを訪ね、ドローンの現在地と、国産ドローンの可能性についてうかがった。

ハードとソフトを融合し
次世代基準のドローンを開発

経済産業省のウェブサイトにあるドローン政策のページには、「空の産業革命に向けたロードマップ」が掲載されている。小型無人機、いわゆるドローンを使った物流や災害、農林水産業、インフラの維持管理、測量、警備などの分野で、安全に利活用するために必要な技術開発や環境整備が記され、来たるべき時代を感じられる。

農業やインフラ点検などの分野では、ドローンの活用がすでに実用化され、「レベル1(目視内での操縦飛行)」、「レベル2(目視内での自動・自律飛行)」は達成。「レベル3(山や海、河川、森林などの無人地帯での目視外飛行)」においては、離島や山間部への荷物配送、被災状況の調査といった実証実験が今も継続中だ。

「今後は、『レベル4(都市上空など有人地帯で目視外飛行)』の実現に向け、物流や医療、災害対応などでの新たな活用を想定し、社会実装に向けた課題の整理と解決が求められます」とロードマップを解説してくれる曽谷さん。

曽谷英司さん。ドローンとソリューション提案によって「人間が行うには危険な仕事」「人間にとって極めて重い労働」「多数の人数と労力、時間を必要とするもの」をロボティクス技術に置き換えていきたい

空を飛ぶドローンの他に、UGVと呼ばれる無人地上車両、農薬散布などに利用するUSV(ボートタイプのドローン)を開発するイームズロボティクス。空・陸・海と、すべてのフィールドで利用できるドローンを開発できるのは、日本では同社だけだという。また、躯体だけでなく、制御ソフトやAI(人工知能)の組み込み、運行管理などのクラウドソフトの開発も手がけ、ハードとソフトの両面を扱えるのも特徴だ。

特にドローンを制御するOSには、「ArduPilot(アルジュパイロット)」という世界基準のオープンソースのソフトウェアを使用。日本では取り扱う企業は少ないが、アメリカのボーイング社、ヨーロッパのエアバス社など、世界で1,000社以上が採用している。柔軟性と拡張性に優れ、機体に接続できるフライトコントローラーやセンサーなども豊富で、クライアントの求める機能の追加や、新しいアイデアの実験をすぐに行えるのもメリット。

ドローン(マルチコプター)以外にも、飛行機型やVTOL(垂直離着陸機)、ローバー、ボート、潜水機などにもアルジュパイロットを使った機体が多く、同社のカバー率は15%に達する。シェアは世界第2位、日本第1位を誇り、技術力の高さが分かる。

「船や乗用車、草刈り機など、電動制御されたものなら、ドローンに変えることができますよ」と曽谷さんは笑う。

社名のEAMSは 「Engineering for Autonomous Mobilities(自律移動のエンジニアリング)」の頭文字をとったもの。単なる技術屋ではなく、社会に必要とされる「道具」としてのソーシャルロボティクス企業を目指す

自律型の多機能ドローンを使い
農業や物流などの課題を解決する

ドローンはあくまでも「道具」や「手段」であって、クライアントが抱える本質的な課題を解決するのがイームズロボティクスの使命だと話す。

ここ数年、中山間地域や大規模ほ場などで農薬散布をするドローンを見る機会も増えてきた。しかし、農業の現場で活躍する高齢者にとって、プロポを操作することは難しい。そこで、コントローラーにタブレットを採用し、農薬散布の範囲を指で囲むと飛行ルートが作成され、自動でドローンが散布するシステムを開発。直感的に操作できると農家から喜ばれている。

本社のある福島県では、鳥獣害対策に取り組んだ。東日本大震災による原発事故によって多くの住民が避難。無人の町に野生のイノシシが増え、住居に侵入することもあり、避難指示が解除されても、住民が安心して帰還できないという問題が起こっていた。

設置したセンサーがイノシシを感知すると、ドローンが自動で発進し、搭載したカメラによる画像認証やサーモグラフィー(温度感知)によってイノシシを自動で追尾。追い払うことに成功すると、自動で元の場所に着陸する。また、UGV(無人地上車両)もあわせて使うことで、地上からもイノシシを追い払った。

これまで音や光による追い払いがあったがイノシシが慣れてしまい、効果は限定的だった。ドローンの場合は、近づいてくる飛行音に警戒し逃げることが分かった。自動追尾し、追い払い効果も高い

このようなAIによる画像認証システムは、災害用ドローンにも応用される。上空から現場を撮影し、要救助者やレスキュー隊を識別。人数まで把握できるので、ドクターヘリの要請、必要な救命道具の準備など、的確な指示を送ることができる。

物流では、佐川急便とともに島根県美郷町の山間部で実証実験を行った。山間地の宅配便の荷物のほとんどが3kg以下で、曲がりくねった山道を車で運転し届けている。また、異常気象による崖崩れや倒木によって道がふさがれ、荷物を届けられない事例も増えてきた。これがドローンに変わることで時間を大幅に短縮でき、物流コストを抑えることができ、さらに自然環境にも優しい。実証実験では公民館から6kmあまり離れた防災公園に、10分ほどで荷物を届けた。

今回の実証実験が大きな話題を呼んだのは、東京にオペレーション会場を設置し、650km離れたドローンを操作できたこと。飛行開始のボタンを押しただけで、後は自動で飛行し、補助者なしで、無事に任務を遂行。いずれ東京から日本全国のドローンをコントロールしできるかもしれない。人手不足に悩む物流業界を大きく変える一歩になった。

美郷町では高齢化が進み車を手放す人が増え、買い物や通院などの移動の不便が顕在化している。中山間地域の物流を守るドローンに住民の期待が寄せられる

急成長するドローンビジネス市場に向け
山積した技術的な課題を一つずつ解決

「レベル4実現のためには、安全性や信頼性をさらに高める必要があります」と曽谷さんは指摘する。

「飛行時間は20〜30分と短いですし、運べる荷物も5kgほど。電波の届く範囲も限られ、GPSの精度も甘く数メートル単位でずれることもあります。また、雨や風にも弱い」。クリアしなければいけない課題ばかりだと苦笑いする曽谷さんだが、いずれも技術的な進歩によって2〜3年ほどで大きく改善できるという。

全固体電池が実用化されれば2時間程度の飛行が実現する。GPS精度に関しては、日本版GPSと言われる日本の衛星測位システム「みちびき」を使うことで、誤差を数センチに抑えることができ、対象物の10cm手前で止まることも可能になる。また、同社も協力しているリモートIDの実装によって、セキュリティの不安も払拭される。

今のドローン業界は、車のような型番認証や車検制度、品質基準などが未整備。今後は官民でつくる環境整備に向けた協議会で、機体認証や操縦ライセンス制度の導入が予定されている。

「今は、会社の隣にある中華料理店からドローンでラーメンを運ぶためには、何十枚も書類が必要だし、申請に何日もかかる。2022年度を目標にしたレベル4が実現すれば、いつでも、誰でも、自由に飛ばすことができ、出前も簡単にできる。マーケットがグッと広がるんです」

あるドローンビジネス調査報告書によれば、機体やサービスなどを含めたドローン関連の市場は、2020年と比較して、2025年には3倍以上の6427億円まで成長すると予測。特に物流は60倍以上と急拡大し、マーケットの期待は想像以上に大きいことが分かる。

施設内には、UGV(無人地上車両)や開発中のドローンが所狭しと並ぶ

暮らしを変えるインフラとして
国産ドローンが世界中で活躍する日

空撮やホビー用では中国製ドローンが市場の70%を占めている現状にあって、日本に勝ち目はあるのだろうか。

ベンチャー企業や先行している欧米のベンダー、最近ではSONYなどの大手企業もドローン業界に参入し、競争はますます厳しくなっている。中国のDJIはドローンだけでなく、カメラやジンバルも生産し、空撮分野においては圧倒的なガリバー企業。しかし、物流や警備などの産業用には進出しないとも言われ、この分野では日本に勝算はあると曽谷さんは考える。

「ドローンはあくまでもIoT(モノのインターネット)デバイスの一つ。ドローンで得た情報を、どう生かすかが大事なんです。機体とプログラミングの両輪で、クライアントの課題を解決するソリューションを提供していきたいですね。

また、アルジュパイロットと日本の独自技術を組み合わせた国産ドローンを世界に輸出したいと考えています。日本版GPSの「みちびき」は、日本の経度と近いインドネシアやフィリピン、オーストラリアなどでも利用できるので、グローバル展開の足がかりにしたいですね」と意気込む。

同社は昨年、「ドローンポート」をリリースした。これは、ドローンの自動離着陸、自動充電を兼ね備えた「基地」のようなもので、Wi-Fiがあればどこでも設置可能だ。タイマーや外部センサーを使いハッチを開閉させられるため、建屋やインフラなどを定期的に検査し、データを本部に送信するといった使い方を想定している。

開発中のドローンポート。FRPと鋼鉄製で、雨や風、雪などからドローンをしっかり守る。二次元バーコードを使った超高度着陸システムは、特許出願中

「ドローンを安全に導入するには、航空法や電波法などの法律の知識、操作するオペレーション技術、IoTの知識、ネットワークの知識など、幅広い知識や技術が求められます。利用者はそれらのことを理解しなくても、自動で使えるようにするのが私たちの仕事なんです」

90年代初頭に商用利用が始まったインターネットは、利用者は一部に限られ、多くの人にとって関心は薄かった。しかし四半世紀がたった今、暮らしやビジネスになくてはならないインフラにまで成長。ドローンも同じように、物流をはじめとした、生活に欠かせないインフラに成長することは想像に難くない。さらに、ドローンに関わる新しいサービスや職種も生まれるにちがいない。

「ドローン技術の進歩は早いし、変化が激しい。弊社は技術力があり、世界と互角にやり合える。だから楽しくてしょうがない」と少年のように話す曽谷さん。実現まであと数年。映画やマンガで見た世界は、もう目の前に迫っている。

イームズロボティクス株式会社

2012年にテレビユー福島関連会社として、ドローンを使用した空撮業務としてスタート。その後、産業用ドローンビジネスへ進出し、2018年にイームズロボティクス株式会社を設立。企業の業態にあわせてカスタマイズしたドローンの企画開発と販売、各種ソリューションを提供。埼玉県ふじみ野市では、自律制御技術やAI、ディープラーニング、通信技術開発、クラウドコンピューティングなどの先端技術の開発を行う。サービスフィールドは、農業、測量、インフラ点検、物流など幅広い。

イームズロボティクス株式会社

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