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防災・減災 技術レポート!浜からビジョン

最前線の防災・減災技術、最先端のテクノロジー、産業界の最新トレンドを紹介します。

サービスロボットのニッチな市場を狙う
ロボットシステムインテグレーター

2021年03月18日

VISION「浜からビジョン」

佐藤 良一

大西 威一郎さん

株式会社クフウシヤ 代表取締役

1977年生まれ。兵庫県神戸市出身。明治学院大学経営学部を卒業し、システム開発会社での営業職、CAEソリューション会社での技術職を経験。2009年に法政大学ビジネススクールでMBA経営管理修士(専門職)を取得。同年から父親が起業して始めた飲食店を3年間手伝う。2012年に中小企業診断士として相模原市の産業振興財団に採用され、その後さまざまな縁を得て今に至る。

ロボットというと映画やアニメの話、もしくは産業用アームロボットやドローンなどをイメージする人も多いだろう。生活に身近な存在とはまだまだ言い難いのが実情ではないだろうか。だが、私たちの暮らしの周りで役立つサービスロボットの開発も日々進んでいる。クフウシヤもそんなサービスロボットを開発する会社だ。福島県南相馬市にあるホテルラフィーヌに、同社の掃除ロボット第1号が納品された。このホテルに代表の大西威一郎さんを訪ね、開発の経緯や南相馬市のロボット産業についてお聞きした。

ロボット特区の相模原市で創業
ニッチな分野の協働ロボットに目を向ける

ベンチャー企業のクフウシヤは神奈川県相模原市で創業。相模原市は「さがみロボット産業特区」の中核都市としてロボット関連産業を集約し、生活支援ロボットの実用化と普及に取り組んでいる。ロボット産業に対するビジネス支援策が手厚く、代表取締役の大西さんは「チャンスがあるなら、やるのがベンチャー」とロボット事業に乗り出した。

「それまで私のバックボーンにロボットは一切ありませんでした。IT系の経験はありましたがバリバリのエンジニアでもありません。経験も、知識も、ノウハウもないところから新しい産業にチャレンジするとなると、確かに補助金もすごく魅力的ですが、協力会社さんとのマッチング支援がありがたいんです。セミナーで知識を得たり、マッチングイベントでパートナーを見つけたりすることができたので、業界のことを良く分からないところからスムーズに事業を始められました」と大西さん。創業5年目に相模原市のインキュベーション施設に事務所を移し、ソフトウェア開発の技術をコアに、製造業の現場で使われる産業用ロボットのシステムインテグレーションからスタートした。

産業用ロボットは半完成品と呼ばれ、それ単体では何もできない。例えばハンド(手)を付けたり、センサー(目)を付けたり、動作制御(動き方)を教え込んだりして製造ラインに組み込む必要がある。これを「システムインテグレーション」と言い、ロボットを1つのシステムに統合(インテグレート)することで初めて使えるものとなる。

機械商社である株式会社ファブエース(横浜市都筑区)と共同開発した「Co-TIG Welders」は、協働ロボットでTIG溶接を可能にしたロボットシステム。クフウシヤが開発したソフトウェアでタッチパネルを操作して制御するほか、ロボット本体を手で動かして動作を教え込むこともできる

産業用ロボットは日本が得意とする分野で、以前から自動車産業などでファクトリーオートメーション(FA)は広く普及しており、入り込める余地はすでにない。そこで大西さんはここ数年で飛躍的に導入が増えている協働ロボットに目を向けた。協働ロボットとは、人の隣で協力して働くロボットのこと。比較的大きくなく軽量で、ぶつかると止まるためさほど危なくない。一方、従来の産業用ロボットは高速・高出力なためとても危険。安全確保のため人が近づけないよう安全柵で囲って固定されるため変種変量に対応しにくいという面がある。

「少子化による人手不足に加えて、日本の中小企業、ものづくり企業は、小ロット多品種になってきています。ここは人の手でやりたい、明日は別の仕事をやらせたい、と臨機応変に対応できるのは、安全柵が不要で、キャスターでガラガラ動かせる協働ロボットなんです」

現在、同社の収益のメインはこの協働ロボットによるものだ。

「協働ロボットは速度や精度が産業用ロボットより劣るのでちょっと下に見られていたというか。FAの先輩企業は目を向けていなかったのでチャンスかなと思って始めました。あまり競争相手のいないところでやりたいという気持ちがあって、ニッチな市場をいつも狙っています」

大西威一郎さん(株式会社クフウシヤ 代表取締役)。「ものづくり企業向けの協働ロボット案件と自律移動ロボットの研究開発にチャレンジしています」

思いがけず始まった掃除ロボットの開発
大手ではありえない発想で独自性を発揮

あるとき、相模原商工会議所の集まりで、あるビルメンテナンス会社から「人手不足と高齢化で掃除スタッフが確保しづらい。掃除ロボットを作れないか」と軽い感じで声をかけられた。だが、突然そう言われても、掃除ロボットにどういう技術が必要なのかも分からない。

「クフウシヤというヘンテコな社名には、『人生も仕事も思い通りにいかないのが当たり前。明るく前向きに工夫して乗り越えていきたいね』という意味を込めています。ですから、どんな突飛な案件でも、『いや、できません』ではなく、『面白そうですね、ちょっとできるか考えてみます』と。いつもそうです」

調べてみると、掃除ロボットに必要な自律移動技術が大転換期にあると分かり、「ROS(ロス)」と呼ばれるオープンソースの知能ロボット開発用ミドルウエアを使って作れると判断。さっそく開発に着手した。

「開発は苦労の連続です。ロボットって完全なロジックで制御すると思われていますが、全然そんなことはなくて。機械、電気、ソフトウェア。この3要素が複合的に影響するから非常に難しい。当社の強みやノウハウはソフトウェア開発の技術力にありますが、方程式を解くみたいに簡単にいかないのがロボット開発なんです」

そしてようやく1号機Asion(アシオン)が完成。独自のアルゴリズムで清掃エリアの最適な塗りつぶし経路を作成する。障害物を感知すると止まり、よけて進む。

自律移動掃除ロボットAsion(アシオン)。「道を空けてください」などの音声を発したり、表情を変えたりと愛嬌たっぷり。取材日はホテルへの納品日で、社員がホテルスタッフに使い方を説明

「ロボットは壁際に行くと位置を把握しづらくなります。しかしゴミは壁際にたまる。ですから大手企業は壁際すれすれを行くロボットをたくさんの予算と人数を投じて開発しています。われわれが同じ土俵に立つには工夫が必要。思い切って壁際1メートル以内には近づかないことにしました。『壁際は人間がやるからいいよ』とお客さんから教えてもらいました」

「もう1つの工夫は、大きくて重くてうるさいこと。大手さんは小さくて軽くて静かなものを作る。でもそうすると吸引力が弱くなる。Asionは吸引力が強く、吸引ノズルを床から少し浮かせてあり、タイル床、点字ブロック、引き戸のレールも問題ありません」

ロボットのまちの実証実験なら
駅を降りたらロボットがしゃべるだろう

同社が南相馬市に拠点を構えたのは2年前。まだ産業創造センターも福島ロボットテストフィールドもなかった頃だ。相模原市も南相馬市もロボット特区で、市役所同士が情報交換する中で大西さんが手を挙げた。それが福島に来たきっかけだ。進出にあたって行政や各支援機関の支援は大変心強く、両市の架け橋になれたらいいと話す。Asionの試作には南相馬市内の企業が協力し、福島ロボットテストフィールドで実証実験を行った。

掃除ロボットAsionの第1号機を導入したホテルラフィーヌ(南相馬市)代表取締役の後藤悦宏さんも、クフウシヤに期待を寄せている。

「業務用ドライ掃除ロボットのデモンストレーションを見に来てくださいと言われてね。どうやら加工部品の全てを地元の町工場で作ってると。それで大西さんを紹介されて、南相馬に事務所を借りていて、ときどき来てちょっとずつ作ってるとおっしゃる」

右に座っている方がホテルラフィーヌの後藤社長。南相馬市旅館ホテル組合の組合長も務める。「Asionの事業化が成功したらそれは後藤さんのおかげ。恩人です」(大西さん)

ロボット産業に対する取り組みに、かねてから後藤社長には考えるところがあった。テレビCMやポスターでのPRを目にするが、何か実感が伴わない。ロボットの一大開発拠点だ、ロボットのまちだと言うけれど身近ではない。「街の中に1台でもロボットを置いたらどうだと常々話していたので、駅前にある自分のホテルに導入することにしました」と後藤さんが続ける。

「別にこれで省力化になるわけじゃない。(コロナ禍で)恐ろしいほど人が余っているから(苦笑)。でも『ロボットのまち』なんでしょ。訪れた人にそういう印象を残すことが大事。災害復旧ロボットとかドローンとかも非常に重要な技術だけれど、もっと生活レベルに入ってくることで身近に感じられますから」

「『拙速は巧遅に勝る』。とにかく早くやれと。100点のものを出そうと思っていては時間ばかりかかる。まず出してみて、ダメなところを直してまた出した方がよっぽどいい商品になると思うんですよ」

後藤社長は大西さんのことを年の離れた弟のように応援している。熱量のある言葉と行動力に大西さんも刺激を受けているようだ。

掃除ロボットを皮切りに
自律移動ロボットで日本一の会社を目指す

現在は、福島イノベーション・コースト構想を推進する地域復興実用化開発等促進事業費補助金を受けて、階段専用の掃除ロボットを開発中。高齢者が階段掃除をするのは大変と聞いて考えついた。やはりニッチな、他社が手を付けていないロボットだ。福島イノベーション・コースト構想推進機構の支援により特許を取得。3年計画の1年目で、各所で実証実験を実施している。

目標は、日本で一番の自律移動ロボットの会社になること。自律移動ロボットが掃除をすれば掃除ロボット、カメラを積めば警備ロボット、センサーを積めば点検ロボット、荷物を運べば運搬ロボット。応用先は無限にある。

Asionは人の前では止まってよける。タブレットを使って簡単に操作できる

「どんどん科学技術が進歩して、IoT、5G、AIが進んでいっても物理的な移動は必ずある。そして、それすら無人化したいというニーズは大きくなる一方だと思う」。“自律移動ならクフウシヤ”といわれる存在になりたい。そのために絶えず新しいことに挑戦し、たくさん失敗しても構わないと話す。

「事務所には、試作品がゴロゴロしていますよ。失敗はやる気の証拠。メンバーにはどんどん失敗していいと伝えています。グループミーティングで面白い失敗を共有したら、みんなで拍手するんです」と大西さんが笑う。

「うちのメンバーは本当にロボットが大好きで。大企業から『給料が下がってもいい、どうしてもロボットがやりたい』と来てくれたエンジニアばかり。こんな社名だし、工夫が好きな人が多いんです。ぜひ南相馬事務所でもそんな人材と出会いたいな」

今後近い将来、掃除ロボットをきっかけにして、南相馬市がロボットのまちとして広く知られるようになるかもしれない。

株式会社クフウシヤ

2013年創業。社名は「クフウシャ」と読む。小さい「ャ」だと右肩下がりな感じがするため大きな「ヤ」に。ソフトウェア開発を得意とし、電気設計、機械設計も手掛けるロボットシステムインテグレーター。従業員11人、うちエンジニア6人を擁するファブレスメーカー。神奈川県相模原市のインキュベーション施設に本社を置く。ロボット特区の縁で2019年に福島県南相馬市に進出し、原町区栄町の商店街に事務所を構える。サービスロボットの研究開発企業となることを目指して自律移動ロボットの試作・開発に注力している。

株式会社クフウシヤ

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