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「イノベ構想をもっと身近に、未来を現実に」
福島イノベーション・コースト構想 メディア発表会レポート

2026年03月23日

2026年3月6日、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構(以下、イノベ機構)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)との共催により、福島イノベーション・コースト構想(以下、イノベ構想)の成果を全国に発信するためのメディア発表会を開催した。会場となったのは、東京の新たな玄関口として注目されている高輪ゲートウェイシティのコンベンションセンター。イノベ構想の重点分野である水素・ドローンの分野において顕著な成果を挙げている企業3社の事例をはじめ、NEDO、福島国際研究教育機構(以下、F-REI)の取り組みの紹介、トークセッションなど、多くのメディア関係者が出席した発表会の模様を報告する。

発表会のオープニングでは、イノベ機構とNEDO両機構で理事長を務める斎藤保氏が開会の挨拶を述べた。

イノベ機構理事長 斎藤 保

「イノベ構想の紹介」 福島イノベーション・コースト構想推進機構 事務局長 植木 健司

イノベ機構事務局長 植木 健司

今年の3月11日で、東日本大震災から15年を迎える。大震災と原発事故という未曾有の複合災害により産業や雇用が失われた福島県浜通り地域15市町村の域内総生産(GDP)は2010年と比較して2022年が-4.4%。避難指示が出された12市町村は-40.8%とさらに低く、震災前や全国の水準には遠く及ばない。

そうした中、福島県浜通り地域に新たな産業基盤を構築することを目指し、国、福島県、イノベ機構や関係機関が連携しながら進めている国家プロジェクトがイノベ構想である。「廃炉」「農林水産業」「ロボット・ドローン」「医療関連」「エネルギー・環境・リサイクル」「航空宇宙」を重点分野として、産業集積や教育・人材育成などに取り組んでいる。起業・スタートアップ支援ではこれまでに223件のプロジェクトを支援し、事業化支援では200社/228テーマを対象に訪問等の支援を行い、そのうち129件が事業化に至った。442件の企業立地、5000人を超える雇用も創出した。2020年3月に開所した「福島ロボットテストフィールド(以下、RTF)」の活用も進み、周辺の産業集積に貢献している。

福島イノベーション・コースト構想の全体像

イノベ構想の取り組みを通じて、この後に登壇する3社のように実証から社会実装までを推進する事例も増えてきた。このように産業集積の芽が出つつある一方で、GDPは十分に回復していない状況にある。2025年6月に改訂された「福島イノベ構想を基軸とした産業発展の青写真」(復興庁、経済産業省、福島県)では新たに「『地域の稼ぎ』『日々の暮らし』『担い手の拡大』の3つの視点が盛り込まれた。植木は、「『地域の稼ぎ』については、地元企業とのマッチングにより面的なサプライチェーンの形成を進めるほか、域外から需要を獲得していくことが重要であり、今回のような機会も活用しつつ、福島イノベ構想の成果を全国や世界に発信していきたい」と展望を語った。

イノベ機構産業集積部産業連携支援課 課長 伊藤 太史

続いて、伊藤太史・イノベ機構産業集積部産業連携支援課長が、この後登壇するスタートアップ・進出企業3社を紹介し、前半パートのメインである企業発表へと進行した。

企業発表「水素燃料電池開発からサプライチェーン構築まで『小さな水素社会』を実現する」 OKUMA TECH株式会社 代表取締役 李 顕一 氏

OKUMA TECH株式会社 代表取締役 李 顕一 氏

最初に登壇した李氏は、2021年に水素ドローンや運航管理システムを開発する株式会社OKUMA DRONEを福島県大熊町に設立。ドローンに搭載する目的で開発した水素燃料電池の技術を応用して、水素を中心とした研究開発を展開するため2025年にOKUMA TECH株式会社に社名を変更し、可搬式水素燃料電池、小型水素製造装置を開発してきた。

「浜通りから水素エネルギー事業をスタートさせて、ここから全国展開していきたい」と展望を語る李氏。水素を普及させるために発足した「小さな水素社会ワーキンググループ」には福島県内外の企業など23社が加盟している。2026年1月には将来の拡販を見据えて同ワーキンググループのメンバーである島根電工(島根県松江市)とパートナーシップを締結。島根電工はOKUMA TECHが開発した水素製造装置の中国地方における導入提案、設備施工、運用保守を請け負う。

OKUMA TECH株式会社で現在取り組んでいる開発プロジェクト(発表資料から引用)

発表終盤には「今日はぜひ『粉体水素』という言葉を覚えて帰ってください」と最も注力している技術を紹介した。粉体水素とは、粉体(ホウ素)に水素を結合させた水素化ホウ素ナトリウムのことで、純水を加えれば水素を取り出すことができる。従来の液体水素は低温高圧のため設備コストや規制などの課題があり普及のハードルが高かったが、常温常圧での運搬・貯蔵が可能な粉体水素であれば安全性の向上や輸送・保管の効率化などのメリットがある。

粉体水素による産業化も視野に入れており、「①製造設備」「②カートリッジ製造」「③商社・流通網」「④燃焼系」という4つの商機(サプライチェーン)が見込める。中でも「④燃焼系」は、これまでに培った燃料電池の技術を活かすことができ、EVに粉末水素を導入した粉体水素モビリティなどが考えられるという。「主にへき地で使われる農機や建機は距離的な問題等で既存の水素ステーションにアクセスしにくいので、運搬・貯蔵が容易な粉体水素モビリティの強みを発揮できるはずです」と語る李氏。2035年をゴールに設定し、水素が身近な社会の実現を目指す。

企業発表「先端技術で私たちの未来を守り、可能性に満ちた社会の実現に貢献する」 株式会社ハマ 代表取締役 金田 政太 氏

株式会社ハマ 代表取締役 金田 政太 氏

飛行艇型の無人航空機をはじめとした、さまざまな無人機の開発・製造、それらを使ったソリューションを提供するテックスタートアップの株式会社ハマ。一般的なドローンは複数の翼を回転させて飛ぶが、同社の無人航空機は固定翼機であるため前進するときに揚力を生み出し、効率よく長時間飛ぶことが可能になる。

さらに、同社のフラッグシップでもある無人航空機「HAMADORI」は水面を滑走路にして離着陸できる。固定翼機は助走のために長い滑走路が必要になるが、日本にはそのような滑走路がなかなかとれない。そこでHAMADORIは広い海の上、うねりがある外洋環境でも自動制御で離発着できるようにした。「このような技術は世界でも例がありません」と金田氏は自信を覗かせる。HAMADORIは音響センサーを使った水中観測や水中機器との通信なども可能で、海洋調査や環境モニタリングなどの幅広いニーズにも応える。

無人航空機の自社開発から設計開発受託、無人機の運用訓練まで手掛ける株式会社ハマ(発表資料から引用)

同社が目指すビジョンは「未来を守り、可能性を拓く」。その思いは社名にも込められている。一つは浜通りの「ハマ」だが、もう一つは「世界に降りかかる気候変動や安全保障などの災いから社会を守る“破魔矢”のようでありたい」という思いだ。

近年事業規模を拡大している事業に無人航空機設計開発の受託がある。長年にわたって培ってきた高い技術力と浜通りで実施してきた実証のノウハウが評価され、多数の受注につながっているという。また、各種センシングも成長著しく、東京大学との共同研究による海底地殻変動観測や能登半島地震での沿岸部での被災状況確認といった実績がある。今後は実装という新たなステージに進むという金田氏。「これまで研究開発が中心でしたが、これからの5年間は無人機の量産に力を入れて事業を拡大し、産業を作っていきたい」と話し、金田氏は発表を締めくくった。

企業発表「コンクリート×テクノロジーで『未来』をつくる!福島RDM2センターの取り組み」 會澤高圧コンクリート株式会社 執行役員 大橋 未来 氏

會澤高圧コンクリート株式会社 執行役員 大橋 未来 氏

北海道苫小牧市に本社を置く會澤高圧コンクリート株式会社は、2025年に創立90周年を迎えた老舗の総合コンクリートメーカー。「コンクリート×テクノロジー」で新たな価値の創造に挑む同社は、2023年6月に「福島RDM2センター」という研究開発拠点を開業した。常磐自動車道の浪江ICから10分ほどの浪江町南産業団地内に立地する同センターは、コンクリートの研究(Research)にとどまらず、開発(Development)、創る(Manufacturing)、拡げる(Marketing)までを行う施設として、それらの4つの単語の頭文字を取って「RDM2」と名付けられた。

會澤高圧コンクリートは、福島RDM2センターを先端技術の実証・実装フィールドと位置づけ、産学官連携によるオープンイノベーションを展開している。コンクリートに混ぜた特殊なバクテリアがひび割れを自動的に修復する自己治癒コンクリート「バジリスク」は、すでに量産化フェーズに入っている。また、大橋氏が「浪江から世界に羽ばたける技術になると確信しています」と語る「ec3蓄電・発熱コンクリート」はカーボンブラックを混ぜて導電性を持たせたコンクリートで、蓄電機能や発熱機能を備える。新千歳空港で雪を溶かす発熱コンクリートの実証実験を行っている。

會澤高圧コンクリート株式会社で量産フェーズに入っているひび割れを自動的に修復する「自己治癒コンクリート『バジリスク』」(発表資料から引用)

最新の取り組みとして紹介したのは、コンクリート3Dプリンターとエンジンドローンを合体させた「フライング3Dプリンター」。洋上でグリーンアンモニアを製造するためのコンクリート製浮体をつくるなど、同社が展開するシン・エネルギープロジェクトの一つとして研究開発を進めている。

會澤高圧コンクリートでは、拠点を置く浪江町で毎年「ネットワーキング型テックイベント『結』」を開催し、毎回数百人が浪江町に足を運ぶ機会を創り出している。「当社ではさまざまな取り組みを実施していますが、そういった取り組みを通して関係人口を増やしていきたいと考えています。今年9月に開催する『結』にもぜひご参加いただき、次にご縁をつないでいく機会にしたい」と大橋氏は語った。

NEDOの取り組み紹介「福島から広がる水素エネルギー活用の取り組み」 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 水素・アンモニア部 部長 長谷川 浩之 氏

NEDO 水素・アンモニア部 部長 長谷川 浩之 氏

イノベーション・アクセラレーターとして、技術戦略の策定やプロジェクトの企画・立案、マネジメントを行うNEDOでは、水素を「つくる」「はこぶ・ためる」「使う」「モデル実証」というサプライチェーンを縦軸に、それぞれの技術の成熟度を「共通基盤 技術開発」「要素技術の研究開発~技術実証」「大規模化・商用化実証」という3段階を横軸に据え、網羅的に取り組んでいる。

その取り組みの中で最も重要なプロジェクトの一つと位置づけられているのが、福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド(以下、FH2R)」である。2020年3月に NEDOの委託事業として開所したFH2Rは、当時、世界最大級となるアルカリ水電解装置(10MW)を用いて、水素を製造・貯蔵・供給する実証施設であり、2027年度まで実証を行う計画だ。この施設について長谷川氏は「この規模で5年間事故なく連続運転できている施設は世界的にも前例がなく、国内外から注目を集めています」と説明する。2026年1月には同施設北側に「浪江グリーンアンモニア統合制御実験フィールド」が完成した。

NEDOの委託事業である福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(発表資料から引用)

福島県内では「燃料電池モビリティ」「水素ステーション」「定置用燃料電池」のほか、FH2Rから供給された水素を使った各事業を展開。その例として住友ゴム白河工場(福島県白河市)の水素ボイラー、福島第一原発の排水タンク解体などを紹介した長谷川氏は「FH2Rは技術開発だけではなく、福島県の復興と産業振興を担う重要な拠点になっています」と語った。

NEDOでは2026年度からの「水素社会モデル構築高度化技術開発・実証事業」の応募を始める。長谷川氏は「福島県内の企業の皆さま始め、水素関連事業に関心のある全国の皆さまに応募していただきたい」というメッセージを伝えて発表を終えた。

NEDOの取り組み紹介「NEDO航空・宇宙部の取組」 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 航空・宇宙部 統括兼次世代空モビリティユニット主任 神田 晃佑 氏

NEDO 航空・宇宙部 統括兼次世代空モビリティユニット主任 神田 晃佑 氏

続いて登壇した神田氏は、ドローンや空飛ぶクルマを対象とした「ReAMoプロジェクト(Realization of Advanced Air Mobility Project)(2022~2026年度)」を中心にNEDOの航空・宇宙部の取り組みを紹介した。神田氏は「ドローンは物流や発電所の点検など活用範囲の拡大が見込めます。空飛ぶクルマも新たな空の移動手段として産業拡大していくと考えられます」とプロジェクトの背景を説明した。

ReAMoプロジェクトでは「性能評価手法の開発」「運航管理技術の開発」という2つの研究開発項目を掲げて取り組んでいる。「性能評価手法の開発」では、RTFでの試験設備構築・実証を通じてノウハウを蓄積し、将来的には国際標準を提案するという。また、「運航管理技術の開発」についてもRTFでドローン運航管理システム(UTMS)の基盤構築実証を行うなど、RTFが重要な拠点として活用されている。

「性能評価手法の開発」「運航管理技術の開発」に取り組んでいるReAMoプロジェクト(発表資料から引用)

NEDOは福島県と南相馬市、それぞれと連携協定を締結し、緊密な連携体制を構築することで、関連産業の活性化、地域振興に資する取り組みを推進している。最近では福島県浜通り地域への理解を深め、研究成果を実証・実装する場としての福島県の可能性を考える「NEDO内福島勉強会」を開始した。「福島に進出した企業の方が『自分たちの技術が社会実装されていれば、復興や地域発展をもっと早くできた』と話していたのを聞いて、そういう人たちを後押しすることでビジネスが成り立ち、復興も加速度的に進むはずです。NEDOの役割は福島でこそ発揮させなければいけないと痛感しています」と、より具体的な支援を進める決意を述べた。

F-REIの取り組み紹介「福島国際研究教育機構(F-REI)の概要とF-REIが福島のために実現したいエネルギー技術開発目標」 福島国際研究教育機構(F-REI) エネルギー分野長 矢部 彰 氏

F-REI エネルギー分野長 矢部 彰 氏

F-REIのエネルギー分野長として登壇した矢部氏は、発表の冒頭で、自身がNEDOのイノベーション戦略センターのフェローを併任していることに触れ、「これも福島における連携のあり方の一つだと思います」と述べた。

F-REIは2023年の設立から、研究開発、産業化、人材育成などを一体的に推進してきた。2028年度にはJR浪江駅前に16.9ヘクタールの本部施設を完成させ、2030年度までに研究実験施設や宿泊施設などが本格稼働する計画だ。現在は全国の大学や企業の研究者が委託研究を担い、エネルギー分野だけでも100名以上が研究を推進している。矢部氏は「福島のためならやろうという人たちが、今はそれぞれの施設で進めてくれています。本施設が本格稼働となれば海外から優秀な研究者を招聘するなど、世界に冠たる研究をさらに強く推進することになります」と期待を寄せる。

F-REIが福島のために実現したいエネルギー技術開発目標として掲げたのは3つのテーマだ。福島全体で「エコ水素エネルギー」の好循環を構築することを目指しているという。

F-REIによるエネルギー技術開発目標として掲げた3つのテーマ(発表資料から引用)

1つ目は、太平洋沿岸・沖合海域で大型藻類の種苗を育成し、陸上養殖・大規模養殖方法の開発。CO2固定能の評価手法を開発し、ブルーカーボンによるネガティブエミッションを推進する。2つ目は、阿武隈山地の森林バイオマス資源の活用で、多収量で飼料にも活用できるバイオマス作物の作成技術を開発する。3つ目は、水素の地産地消による変動再エネルギーの最大限の活用のための高効率水素エネルギーシステムの技術開発とその有効性を、浪江町はじめ相双地域と連携して社会実証する。

矢部氏は「福島・東北の復興のため、世界のために、創造的復興の中核拠点として貢献できるよう全力で取り組んでいきます」と、復興に対する思いを語った。

トークセッション
「実証の聖地から実装の先駆地へ イノベ構想の今と未来」 OKUMA TECH株式会社 代表取締役 李 顕一 氏
株式会社ハマ 代表取締役 金田 政太 氏
會澤高圧コンクリート株式会社 執行役員 大橋 未来 氏

前半パート終了後、個別取材の時間を経て後半パートへ。後半パートのトークセッションは、企業発表を行ったOKUMA TECH株式会社の李顕一氏、株式会社ハマの金田政太氏、會澤高圧コンクリート株式会社の大橋未来氏が再び登壇し、浜通りでビジネスを展開することについて意見を交わし合った。モデレーターは、イノベ機構の小林正典産業集積部長が務めた。

イノベ機構 産業集積部 部長 小林 正典

震災から15年が経ち、2026年4月から第3期復興・創生期間という新しいステージに入ることに触れた小林は、「実証から実装への進化をどのように果たすかが今回のテーマ」だと説明した上で、「まずはなぜ県外から浜通りに来たのでしょうか」と尋ねた。

李氏は「楽天のドローン事業部に勤務していた頃に南相馬市で実証実験をしていた経験から、福島県を身近に感じていました。その後、大熊町のまちづくりを進める人たちと出会い、福島のために何ができるかを考えるようになりました」と、人との出会いが浜通り進出のきっかけだったと語った。

OKUMA TECH株式会社 李 顕一 氏

金田氏は東京の自宅のガレージでドローン開発をしてきたという。「南相馬市にRTFができると知り、実証のしやすさ、補助金の手厚さに惹かれて2022年に本社を南相馬市に移しました」と、環境面でのメリットを挙げた。

大橋氏の場合は自身で福島進出を決めたわけではないが、會澤高圧コンクリートが2009年に技術研究所を立ち上げたことがきっかけになったという。「イノベ構想の目指す方向性が当社のやろうとしていることと合致していることに加え、RTFという魅力的な施設、そこで動いている人たちの本気度に当社代表が心打たれて、浪江町に研究拠点を置くことを決めたと聞いています」と説明した。

続いて「福島に来て良かったと思うことは何でしょうか」と小林が質問すると、進出の理由同様に三者三様の答えが返ってきた。大橋氏は「浪江の人たちは県外から来た人を受け入れる気概があり、むしろ私たちが励まされています」と語った。

金田氏は「宇宙や航空、ドローンなどのスタートアップ企業が集まっていて、日々意見交換したり、実証実験を見せ合ったり、一緒に遊んだり、毎日が楽しく、刺激し合っていて各社の発展につながっていると感じています」と笑顔を見せた。

株式会社ハマ 金田 政太 氏

大熊町の復興を目の当たりにしてきた李氏は「会社設立当時の大熊町は何もないところでしたから、一緒に成長してきた気持ちです。地元自治体はスタートアップに対してとても手厚く、補助金の申請時などスピーディに対応してくれてありがたいです」と感謝を述べた。

次に小林氏は「浜通りで事業を展開する上での課題や改善点など、今後のためにも本音で語ってほしい」と切り出した。

「実証はとても進めやすい一方で、福島県、浜通りでどうやって実装するかを考えると難しい」と語った金田氏。その一因として「南相馬から東京まで現在は常磐線で約4時間かかるが、せめて2時間で首都圏と行き来できればより魅力的な場所になると思う」と鉄道網の課題を挙げると、「交通の問題は深刻」と李氏が賛同し、大橋氏も「東京までの移動時間を短くするのに加えて、電車の本数を増やしてほしい」と強調した。

また、大橋氏は補助金申請についての問題も指摘した。「地域復興実用化補助金は同一年度に新規申請できるのは1社1件とされていますが、社内では複数の案件が立ち上がっています。実用化補助金以外の補助金情報を入手しやすくするか、複数採択されるようにならないでしょうか」と訴えた。

未来に目を向けると、人手不足がより深刻になると予想される。「人材確保についてどう考えていますか」と小林が問うと、李氏は「大熊インキュベーションセンターではインターンシップに来た学生と地元企業が交流するイベントを開催しています。そのような機会を増やしてもいいのでは」と提案した。

金田氏は「イノベ構想で他県から進出してきた企業の中には、数年で撤退する企業もあります。その会社に勤めていた人材が浜通りに残って転職するという人材流動化が起きるといいのではないかと思います」と語った。

大橋氏は土木業界ならではの難しさを吐露。「土木業界は3Kといわれていますが、ものづくりの裏側を見て、実は最先端技術を創出しているのだと知れば興味を持ってもらえると思います。そのための情報発信をしていく必要があります」と希望を込めた。

會澤高圧コンクリート株式会社 大橋 未来 氏

登壇した3名は浜通りでともに切磋琢磨する仲間といった様子で、関係の良さが伺えるトークセッションとなった。小林は「15年前の震災に思いを馳せることも大切ですが、その地にいる人たちが幸せに暮らせること、ここを選んでチャレンジしてきた人たちが成功して日本に、世界に羽ばたけるように、プラス思考でこれまでの15年とこれからを捉えてほしいと思います」と力強く語り、トークセッションは終了した。

総括 福島イノベーション・コースト構想推進機構 専務理事 戸田 光昭

メディア発表会の総括として、イノベ機構専務理事の戸田光昭が登壇し、登壇者や集まったメディア企業への感謝を述べた。

イノベ機構 専務理事 戸田 光昭

「東日本大震災から15年が経ち、産業が失われた地域に日本全国からさまざまな企業が集まり、浜通りは研究開発からビジネスまで行える場所になりました。この機会に浜通りの現状や企業の活動に興味を持っていただき、広くその内容を届けていただければと思います」とメディア関係者への要望を伝え、メディア発表会を締めくくった。

会場後方に設置された登壇企業・団体の展示コーナーには、メディアや来場者の関心が集まっていた

Hama Tech Channelとは

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ここでは、東日本大震災と原子力災害からの復興を目指す国家プロジェクト
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