「イノベ地域のテクノロジー」のいまを伝えるWebメディア世界を変える、福島のチカラ「Hama Tech Channel」

「つなぐ、つながる、スゴイノベ!」
──福島イノベーション・コースト構想シンポジウム2025開催レポート

2026年03月16日

2026年1月22日、福島県双葉郡大熊町のCREVAおおくまにて、10回目となる「福島イノベーション・コースト構想シンポジウム」が開催された。2017年、福島イノベーション・コースト構想(以下、イノベ構想)が法的に位置づけられ、同年、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構(以下、イノベ機構)が設立されて以降、浜通り地域等ではさまざまな取組が行われ、数多くの成果が生まれた。今回のシンポジウムでは「つなぐ、つながる、スゴイノベ!」をテーマに、「連携」の成果を紹介するとともに、「地域の稼ぎ」「日々の暮らし」「担い手の拡大」の3つの視点からトークセッションを展開した。その模様をダイジェストで報告する。

シンポジウムの開催にあたり、主催者を代表して斎藤保・福島イノベーション・コースト構想推進機構理事長が開会の挨拶を述べた。続いて、鈴木正晃・福島県副知事、新居泰人・復興庁統括官、藤本武士・経済産業省福島復興推進グループ福島原子力事故処理調整総括官、新保隆志・大熊町副町長の来賓挨拶が行われた。

  • 斎藤保・イノベ機構理事長

  • 鈴木正晃・福島県副知事

  • 新居泰人・復興庁統括官

  • 藤本武志・経済産業省福島復興推進グループ
    福島原子力事故処理調整総括官

  • 新保隆志・大熊町副町長

第1部「創造的復興のための産業集積における「連携」について(地域の稼ぎ)(日々の暮らし)」

「産業集積部の取組」 福島イノベーション・コースト構想推進機構 産業集積部長 小林 正典

2017年7月にイノベ機構が設立。2019年12月、復興庁・経済産業省・福島県により「福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真」が取りまとめられた。この「青写真」は2025年6月に改定され、「地域の稼ぎ」「日々の暮らし」「担い手の拡大」という3つの視点が追加された。今回のシンポジウムは、この3つの視点からイノベ構想の取組と今後の方向性を考える構成になっている。

産業集積部では、企業誘致、廃炉関連産業の集積、重点分野の事業化支援、農業参入支援、事業創出支援、ロボット・ドローン/空飛ぶクルマの技術支援を進めている。

2025年3月末で、イノベ地域内の企業立地件数は428件、雇用創出数は4,823人にのぼる。新たなプレイヤーを迎えて産業集積を活性化させるため、地域復興実用化開発等促進事業(イノベ実用化補助金)、地域や地元企業との連携促進、Fukushima Tech Create(FTC)によるスタートアップ支援プログラムなどを展開している。

小林は、重点分野としてロボットテストフィールドについても触れ、「異分野の交流促進、次世代の人材育成を進めるとともに、ガイドラインの整備や国への働きかけを地道に続けるなど、制度・社会実装への貢献も大きいと考えています」と説明した。

産業集積部では企業誘致や雇用創出に注力してきたが、今後は産業として定着させ、着実に経済効果につなげるまでのステップアップが重要になる。小林は「『地域の稼ぎ』と『日々の暮らし』を生み出すために、国・県および関係機関、地元自治体と連携し一体となって推進します」と強調した。

キーノート・スピーチ「炭鉱から観光 未来へ“つなぐ”」 常磐興産株式会社 取締役 社長執行役員 関根 一志 氏

2022年12月にイノベ機構と連携協定を締結した常磐興産(いわき市)は、イノベ構想参画企業の実証の場として、自社施設や人的リソースを提供している。関根氏は「年間100万人近くの利用者があるスパリゾートハワイアンズの動員力と、当社が長年にわたって構築してきた地元・浜通りのネットワークは、新しい製品や技術を開発する参画企業のお役に立つのではないかと考えて協定を締結しました」とその理由を説明した。

常磐興産の歴史を紐解くと、浜通り地域の産業振興と人的交流の拠点として歩み続けてきた道筋が見える。前身である常磐炭鉱時代には、温泉地帯という悪条件の中で石炭を掘り出すための最先端技術を次々と導入し、周辺には関連産業が集積した。炭鉱の閉山時は1万人を超える従業員と家族を守るため、炭鉱にとっての悩みの種だった温泉をレジャー産業につなげた。

1966年の常磐ハワイアンセンター開業後(1990年にスパリゾートハワイアンズに改称)も、オイルショック、東日本大震災、コロナ禍と、いくつもの苦難を乗り越えてきた。「逆境を力に変える精神がイノベ構想に参画する企業の情熱と重なります」と関根氏は述べる。浜通り地域における次世代の社会基盤を構築する力となっていることにも歴史の巡り合わせを感じ、スパリゾートハワイアンズ内での階段昇降ロボットの実証実験などに場を提供している。

スパリゾートハワイアンズは2026年で60周年を迎えた。還暦は暦が生まれ変わることを意味するという。100年に向けて、「『つなぐ』『つなげる』が最も地域に貢献できることだと思いますから、これまで以上に地域に貢献していきます」と関根氏は展望を述べた。

トークセッション
「点から面へ、参画者が共に成長するイノベーションのカギは」 常磐興産株式会社 執行役員 板東 正俊 氏
株式会社リビングロボット 代表取締役社長 川内 康裕 氏
大熊インキュベーションセンター インキュベーションマネージャー 黒田 敦史 氏
福島国際研究教育機構(F-REI) 広域連携監 村田 文夫 氏

常磐興産株式会社執行役員の板東正俊氏、株式会社リビングロボット代表取締役社長の川内康裕氏、大熊インキュベーションセンター(以下、OIC)インキュベーションマネージャーの黒田敦史氏、福島国際研究教育機構(以下、F-REI)広域連携監の村田文夫氏が、第1部のテーマである「創造的復興のための産業集積における『連携』」について意見を交わした。ファシリテーターは、イノベ機構の小林正典(産業集積部部長)が務めた。

トークテーマの「連携」について、小林は「連携する上での壁や解消したいことはありますか」と問いかけた。人とロボットが共存する社会を目指してロボット開発に取り組む川内氏は「壁だとは思っていませんが、実証実験で終わってしまうという反省点があります」と、社会実装につなげる難しさを語った。

板東氏は常磐興産のエネルギー資材部に所属し、石炭輸入などに携わってきた。「私たちにできることは場の提供です。ビジネス化するところまでは提供できていませんが、そのきっかけとなるサポートはできるので、ぜひお声がけください」と協力の意志を強調した。

常磐興産株式会社 執行役員 板東 正俊 氏

黒田氏は、インキュベーションマネージャーとして、入居企業同士や自治体、地元企業とのつなぎ役を果たしてきた経験から「小さくても成果を早く出し、その成果によるメリットを連携相手にマメに伝えることが最も重要です」と説く。多くの場合、成果が出ない、または時間がかかりすぎているため続かないのだという。

大熊インキュベーションセンター インキュベーションマネージャー 黒田 敦史 氏

連携した後には、そのつながりを広げることが重要になる。F-REIは、共同研究や試作品製作、実証試験など研究開発のフェーズに応じた連携が進むと考えている。村田氏は「まずはネットワークセミナーなどを通じて研究開発の意義や効果をわかりやすく発信し、認知度の向上やパートナーシップの構築に取り組みたいと考えています」と語った。

福島国際研究教育機構(F-REI) 広域連携監 村田 文夫 氏

点から面へ、コミュニティ化について、黒田氏は「浜通りでの展開からスタートしたOIC入居企業も、大熊町だけでなく、自治体を超えて連携をしていく必要があります」と現状を説明。入居企業のほとんどが福島県外から来ていることを踏まえ、自治体や企業ごとのニーズを掴み、入居企業とのつなぎ役となることが一層求められる。

次に、小林は「実証ステージからイノベーションにつなげるため、今後どのようなアクションを考えていますか」とパネリストに投げかけた。

F-REIは、2030年度までに本施設が完成する予定で、本格稼働後は国内外から優秀な研究者が集まり、世界水準の研究活動が始まる。村田氏は「福島のみならず、世界に冠たる創造的復興の中核的な存在になれるように職員一丸となって挑戦を続けていきます」とさらなる躍進に向けた決意を語った。

川内氏は「浜通りでロボットを開発し、サービスを提供し始め、浜通りから福島県内全域へ、さらに全国各地、世界も視野に入っています。これから2、3年が勝負です」と意気込みを語った。

株式会社リビングロボット 代表取締役社長 川内 康裕 氏

スパリゾートハワイアンズでの実証はもちろんのこと、常磐興産はエネルギー関連の強みも活かせる。板東氏は「重工業系企業とはお互いに浸透していませんが、知ればつながるアイデアが出てくると思います。ぜひお役に立ちたい」と新たな可能性を示した。

イノベ構想は着実に進んでいるが、まだまだ出会えていないところはある。小林は「場を作り、つなげる、点を面にする連携の担い手として、浜通りから県内全域、さらに全国に産業規模を広げていく」との思いを語り、トークセッションを締めくくった。

第2部「ふくしまイノベ教育の成果(担い手の拡大)」

「ふくしまイノベ教育の成果~イノベーションは「人」から始まる~」 福島県立勿来工業高等学校 校長 清水 隆司 氏
福島イノベーション・コースト構想推進機構 教育・人材育成部 部長 鈴木 康隆

第2部では、「担い手の拡大」をテーマに、ふくしまイノベ教育の取組と成果について、福島県立勿来工業高等学校校長の清水隆司氏と、イノベ機構の鈴木康隆(教育・人材育成部長)が、対談形式で語り合った。

教育・人材育成部は、イノベ構想の中で「地域特性を活かした特色ある教育プログラムの実施」「新たな担い手とコミュニティの形成」「“浜通りならでは”のコンテンツ作成」を実践。小・中学校から大学までの発達段階に応じて、6つの事業に取り組んでいる。

そのひとつである「福島県双葉郡教育復興ビジョン推進協議会事業(小・中学校)」では、双葉郡小学校絆づくり交流会やふるさと創造学サミットなど、普段の学校生活では体験できない学びを展開している。

「福島イノベーション人材育成支援事業(高校)」は、浜通り地域にある高校を中心にトップリーダーを育成するとともに、企業や研究機関と連携して工業、農林水産、商業、ロボット分野で活躍する人材を育成する。清水氏はこの事業について「学校間、学科間での連携により横断的な取り組みができ、探究的な学びの質の向上、協同的な学びの推進などが期待できる事業です」と評価した。

福島県立勿来工業高等学校 校長 清水 隆司 氏

地元産業の将来を担う人材の育成・確保も、ふくしまイノベ教育の重要な使命である。「福島イノベ構想推進産業人材確保事業(高校・大学等)」では、地元の産業を担う人材や地元企業に就職する人材の育成を促進するため、県内の工業高校などで出前授業や企業見学を実施している。

出前授業や企業見学後の生徒アンケートによると、「地元企業が世界的に活躍していると知ることができた」「進路について具体的に考えるきっかけになった」「専門分野の勉強を頑張ろうと思えた」などの声が聞かれた。企業からも「仕事内容を理解して応募してくれているのでミスマッチが減った」「入社後のギャップがないので定着率が高い」「仕事のやりがいを高校生たちに伝えられてうれしい」といった喜びの声が多く寄せられたという。

「大学等の『復興知』を活用した人材育成基盤構築事業(大学等)」は、全国17大学の県内での研究活動を支援する。鈴木は「高度な知的資源を有する大学等と地域が連携し、未来を担う学生が、未だ残る課題を肌で感じる貴重な学びを通して復興に資する知識を高めている事業です」とその意義を述べた。

福島イノベーション・コースト構想推進機構 教育・人材育成部 部長 鈴木 康隆

ここからは事業の充実に向けた取組を紹介していった。「避難地域12市町村による教育推進事業」は、文科省・県教育委員会と連携して事業のさらなる充実を図ることになる。教員研修に参加した教員のアンケートには「感動して涙が出た。教員になって本当によかったと思えた」という書き込みがあった。それを見た元教員である鈴木は「その熱い思いに私も感動しました。個人的にもうれしい言葉です」と喜びを溢れさせた。

双葉郡教育復興ビジョン推進協議会の「ふるさと創造学」が中学校の公民と歴史の教科書に掲載されたことは大きな話題になった。鈴木は「地域の課題を自分事として捉え、地域の将来を主体的に作ろうとする学びの価値が、教科の学びとして位置づけられたことに大きな意義があります」と語った。

ふくしまイノベ教育のさまざまな取組による成果は、数字にもあらわれている。9人でスタートした大熊町の義務教育学校「学び舎夢の森」は教育内容に魅力を感じ移住する方もいるなど学校定員の150人に迫り、浪江町ではこども園を増築、廃校が検討されていた川俣町内の中学校も小中学校として存続することが決まった。鈴木は「教育内容に魅力を感じて移住する家族が増えているのは、復興の質が新たな段階に入ったからだと思っています」と語った。

地元企業への影響も大きく、浜通りにある3つの工業高校では卒業生の県内留保率が2009年の66.5%から2023年は73.7%まで上昇。イノベ教育の効果もあり多くの生徒がイノベ地域内の企業に就職している。清水氏は「ふるさとの魅力や地元企業の技術力に触れ、福島ならではの学びで成長した子どもたちがこの地域の未来に希望を抱いてくれています。構想の実現に寄与する人材が生まれ始めていることを実感しています」と喜びを語った。

セッションの終わりに、鈴木は「未来を担う子どもたちの笑顔、夢を抱く学生の志に触れ、イノベーションを起こすのは人だと確信しました」と語った。

第3部「交流関係人口の拡大の取組による成果(担い手の拡大)(日々の暮らし)」

取組紹介「交流促進部の主な取組」 福島イノベーション・コースト構想推進機構 交流促進部 部長 吉成 孝志

交流促進部の活動は、知る、訪れる、関わる、地域を担うというステップで進む。ファーストステップは、パンフレットの作成、イベント出展、シンポジウム開催などを通じて、イノベ構想・イノベ地域を知ってもらうこと。

発信する相手も幅広い。大学と連携した情報発信では、2025年度はこれまで全国21大学(23回)の出前講義を実施し、2,400名超が受講した。吉成は「これからの社会を担う大学生に対し、イノベ構想への理解や興味・関心を高めるために開催しています」と語る。

イノベ地域を訪れ、関わってもらうことを目的とした交流コンテンツも企画・開催している。「交流の機会を通じて、地域プレイヤーを1人でも増やしたいと考えています」と吉成はコンテンツに込めた思いを語った。

2024年度の地域の担い手創出事業では、地域で活動している事業者・団体7事業者が採択された。吉成は「本日パネリストとして参加している川上さんは採択事業のひとつである『双葉まるごと文化祭』に参加したことをきっかけに、この地域と深い関わりを持つようになった1人です。」と紹介した。

取組紹介「令和6年度の主な事業及び成果」 ふくしま12市町村移住支援センター 副センター長 藤川 城一

講演冒頭に1分程度のアニメーション動画を流した後、藤川は「12市町村移住支援センターの取組を知っている人はどれくらいですか?」と質問した。それに対して手を挙げたのは会場の半分程度。「では、今日はもう半分の人に知ってもらえるだけで大きな成果です」と笑顔を見せた。

ふくしま12市町村移住支援センターは、原発事故の影響で避難指示の対象となった12市町村への移住促進、12市町村の移住施策の支援や広域連携施策を実施することを目的として、2021年7月1日に設置された。まずは12市町村の認知拡大を図るために広報に注力し、WEBサイトを通じて広く情報を発信してきた。また、人気YouTuberとのコラボレーションのほか、テレビ東京と連携協力により「風のふく島」というTVドラマを制作・放映した。

移住では、そこに仕事があるのかどうかが最も重要視される。幅広い業種・分野で移住者を受け入れる企業を募り、移住求人情報サイトには300社以上が掲載し、2,000人を超える求人がある。

12市町村への理解促進につなげる移住体験ツアーは、20人の定員に対して毎回100人を超える応募がある人気ツアーとなった。こうした取組の効果もあり、センター設置の2021年度から3年で12市町村への移住者は約4倍となり、毎年200人ずつ増え、2024年度は800人を超え、20~40代の若い世代が多い傾向にある。藤川は「来年度から第3期復興・創生期間に移行します。年800人で満足せず、毎年1,000人を目標に、さらに取組を加速させます」と意欲を見せた。

取組紹介「F-ATRAsエフ・アトラスの取組」 一般社団法双葉郡地域観光研究協会(F-ATRAs) 代表理事 山根 辰洋 氏

「2013年に支援者として双葉町に関わり、2019年に独立するまで多くの町民と交流し、この町が大好きになったことが今もここにいる理由です」と語る山根氏。双葉町出身の妻とともに双葉町に住み、支援者から地域をつくる当事者になった。

「自分なりの事業を作って地域に貢献したい」と考えた山根氏は、観光産業、人的交流を通じて地域再生を目指すF-ATRAsを設立した。観光は経済効果のみならず、ブランディングとしての効果も大きいという。「観光は平和な場所でしか産業として成り立ちません。平和で観光できる場所であるというイメージは、この地域が再生されているというリブランドにつながると考えています」と山根氏は説明する。

F-ATRAsは2021年からイノベ機構のブラッシュアップ事業に参画し、コンテンツ造成に加えて、地域への人材定着も実現している。2021年のパレットキャンプ、2022年の双葉まるごと文化祭、2024年の短期留学プログラムと、参加した学生はその後もこの地域と関わっている。パネリストの川上氏もその1人だ。

現在F-ATRAsで働くインド出身の2人も創業当時よりインターンとして関わり、ブラッシュアップ事業にも企画提案を行った。今はインドの大学との連携、大学生とのプログラム造成などで活躍している。設立から6年かけて、ビジネスとして成り立つようになった現状について山根氏は「地域の良さを知ってもらうきっかけを作ることができ、地域の皆さんの中にも観光をがんばろうという雰囲気が醸成されているのがうれしいです」と語った。

取組紹介「totenトウテンの取組」 株式会社博報堂地域共創プラットフォーム事業推進局 ビジネスプラナー(合同toten創業者) 川上 友聖 氏

祖母が浜通り出身だという川上氏は、大学生のときにスタディツアーで浜通りを訪れたことをきっかけにこの地域と関わるようになった。そのときの気持ちについて川上氏は「お世話になっている人がよく言っていた『同情でなく共感でその地域を知ろう』という言葉に従い、その地域の文脈を酌みながら楽しいことをやりたいと思い、企画・開催したのが『双葉まるごと文化祭』でした」と語った。

浜通りで働き続けることを視野に就活しながら、合同会社totenを立ち上げ、福島県12市町村移住サポーターの肩書も。現在は博報堂に勤務して地方創生に取り組んでいる。

totenの主な事業は、移住・定着支援、関係人口創出、文化芸術創出。川上氏には「被災地だからという理由ではなく、双葉町に古くから紡がれてきた文化芸術を価値と捉えて、その魅力を知ってもらいたいのです」という強い思いがある。

「学生アーティスト中期滞在型アーティストインレジデンス」は、双葉町の歴史・伝統・文化に触れ、刺激を受けたアーティストたちによる自発的な活動に発展した。「アーティストには、地域の文化や芸術に共感しながら、彼らなりに役立てること、表現することを考えてもらえればと思っていました」と川上氏はその狙いを語った。

「自分自身も20代なので、自分の経験を活かしながら同年代の関係人口の創出や移住支援に貢献したい」と語る川上氏。移住や起業に興味がある人向けのツアーを企画し、移住促進や定着支援にも取り組んでいる。

トークセッション
「交流関係人口の拡大の取組による成果(担い手の拡大)(日々の暮らし)
~地域の魅力発信から担い手の創出へ~」

最後のトークセッションは、移住当事者である山根氏と地域のにぎわいづくりに取り組む川上氏の話を中心に展開した。吉成は「県外からやってきて、地縁がない中でどのようにつながりを作ったのでしょうか」と尋ねた。

それに対して山根氏は「さまざまな人と仲よくなり、コミュニケーションの取り方も教えてもらいました。暮らし方や人とのつながりの作り方も、全て教えてくれたのは双葉町の皆さんです」と振り返る。しかし、来たばかりの頃は不安があったという。「この土地を傷つけた東京の人間ですから、怒られるのではないかと思っていましたが、皆さん温かく迎えてくれました。人を通じてしか双葉町を知ることはできませんでした。そういった人たちがいなければ双葉町に残っていなかったと思います」と感慨深げに語った。

川上氏には「スタディツアーで1週間滞在した後、なぜ地域で就活をしようと思ったのでしょうか」と質問した吉成。

川上氏は「この地域の人たちと触れ合う中で、自分にはない価値観や感性を学びたいと考え、ここに関わり続けられる環境を探して就職活動をしていました」と答えた。

川上氏は移住サポーターでもある。移住サポーターは、人が人を呼び込む直接的な定着支援として2022年に始まった。藤川は川上氏に対して「移住サポーターは団体個人合わせて37件ですが、その1人である川上さんは非常にありがたい存在です」と感謝を述べた。

県外から移住し、関係人口の創出や移住・定着支援、観光事業などに取り組む山根氏と川上氏の話から、地域の原動力は人だと改めて感じた。浜通りよりも物質的には恵まれた都会からやってきた2人がこの地域に関わり続けている理由も、ここに住む人たちにある。吉成は「全町民が避難するという厳しい局面に立った大熊町で、これだけ多くの人が集まってシンポジウムが開催できたのも一つのつながりだと思います。皆さんとともにさらに多くの方とつながりながら取組を進め、1人でも多くの地域プレイヤーを作っていきます」と決意を語り、トークセッションを閉じた。

閉会挨拶
福島イノベーション・コースト構想推進機構 専務理事 戸田 光昭

シンポジウムの締めくくりとして、イノベ機構専務理事の戸田光昭が閉会の挨拶に立った。戸田は、3つのセッションを通じて「連携」から生まれる力と、「人」が主役となって進む復興の確かな手応えを語った。 「本日は『つなぐ、つながる、スゴイノベ!』のテーマの通り、点から面へと広がる多くの連携の形を見ることができました。地域外から集まる新たなプレイヤーの情熱と、地元の皆さんの温かな受け入れの気持ちが融合し、福島ならではの新しい価値が次々と生まれています」と振り返った。

さらに、今後の展望について「イノベ機構は、これからも挑戦を続ける皆さんの伴走者であり続けたいと考えています。ここで生まれた繋がりをさらに太くし、浜通り、そして福島全体へとイノベーションの波を広げていくため、機構一丸となって取り組んでまいります」と決意を表明。最後に、会場およびオンラインで参加した視聴者へ感謝の言葉を述べ、シンポジウムを締めくくった。

ステージイベント終了後は交流の場にもなった特設展示コーナーで、多くの企業・団体がパネル展示を行い、来場者の関心を集めていた

<展示パネル企業・団体>
・株式会社リビングロボット
・AstroX株式会社
・インターステラテクノロジズ株式会社
・OKUMA TECH株式会社
・株式会社クフウシヤ
・株式会社ネクサスファームおおくま
・株式会社Mecara
・トラスト企画株式会社
・トレ食株式会社
・大熊町
・福島国際研究教育機構(F-REI)
・福島ロボットテストフィールド
・東日本大震災・原子力災害伝承館
・ふくしま12市町村移住支援センター
・福島イノベーション・コースト構想推進機構

Hama Tech Channelとは

「世界を変える、福島のチカラ」のもと、山積する社会課題に立ち向かい、
豊かな未来を切り拓くリーダーとテクノロジーにフォーカス。
「社会を良くする」力強い変革を応援する、福島発・未来共創型メディアです。
ここでは、東日本大震災と原子力災害からの復興を目指す国家プロジェクト
「福島イノベーション・コースト構想」の一環として、
地域の未来を切り拓く取り組みを発信しています。