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福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)が開所。安倍首相が決意表明

2020年05月13日

2020年3月7日、安倍首相出席の下、再生可能エネルギーを利用した世界最大級の水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」の開所式が執り行われた(写真左から、田中和徳復興大臣、梶山弘志経済産業大臣、安倍晋三内閣総理大臣、内堀雅雄福島県知事、吉田数博浪江町町長)。安倍首相は、次世代の燃料電池自動車(MIRAI Concept)を自ら運転し、登場。「壮大なチャレンジの舞台は、この福島です。ここから、皆さんと共に、世界のエネルギーのありようを大きく変革していく」と、決意を述べた。

「水素社会を一気に実現していく。福島水素エネルギー研究フィールドは、その世界最大のイノベーションの拠点となるはずです。」と語る安倍首相

2019年のダボス会議で、2050年までに水素の製造コストを今の10分の1以下に引き下げ、天然ガスよりも割安にすることを目指すことを世界に向けて発信した安倍首相。式典では、「壮大なチャレンジの舞台は、この福島です。ここから、皆さんと共に、世界のエネルギーのありようを大きく変革していく。福島産のクリーンな水素が、工場の生産現場を動かすエネルギーとなり、バスやトラック、あらゆる自動車の燃料となる。浜通りに生まれる福島ロボットテストフィールドでは、水素ドローンも飛び回ることとなるはずです。そのような水素の新しい時代を、共に築き上げてまいりましょう」と、決意を述べた。

福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)(写真提供:東芝エネルギーシステムズ)
中央の白い建物が「水電解装置」。製造した水素は右側の白い水素ガスホルダーが並ぶ、「水素貯蔵・供給設備」で貯蔵される

FH2Rは、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東芝エネルギーシステムズ(株)、東北電力(株)、岩谷産業(株)が、2018年から福島県浪江町で建設を進めてきた世界最大級となる水素製造装置を備えた水素製造施設。18万m2の敷地内に設置した20MWの太陽光発電設備で発電したエネルギーで水を電気分解することで水素を製造する。水素製造時のCO2排出量を削減する。そもそも、再生可能エネルギーは季節や天候などによる出力変動が大きく、安定した運用を行うには、蓄電池など、その変動を調整するしくみが必要になる。FH2Rでは、電力系統に対する需給調整を行うことで、蓄電池を使わずに出力変動の大きい再生可能エネルギーの電力を最大限利用するとともに、クリーンで低コストな水素製造技術の確立を目指す。

浪江町棚塩団地内に建設されたFH2Rの全景(写真提供:東芝エネルギーシステムズ)

(左)水電解装置(右)水素貯蔵設備
1日あたりの水素製造能力は、水素で動く燃料電池自動車約560台分、または、約150世帯の電力1カ月分の電力に相当

FH2Rで製造した水素は、主に圧縮水素トレーラーやカードル(圧縮水素容器を集結させた機器)を使って輸送し、福島県や東京都などの需要先へ供給する予定。定置型燃料電池による発電、燃料電池自動車や燃料電池の燃料などに使用される予定だ。

浪江にじいろこども園の園児、なみえ創成小・中学校の児童・生徒が描いた絵画をデザインした「水素運搬トレーラー」。FH2Rでは12台のトレーラーを運用

FH2Rで製造されるCO2を排出しないクリーンな水素は、年間200トン。現在国内で走っているすべての燃料電池自動車が1年間に使う水素の半分以上を賄うことができる。震災と原発事故で大きな被害を受けた浪江町。未来の水素社会に向けた世界最大のイノベーションの実証拠点となることに期待したい。

安倍首相は、燃料電池自動車 MIRAI Concept(TOYOTA)を運転して登場