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「第2回ロボテス縁日~ロボット・ドローン大集合〜」
「風とロックCARAVAN福島㏌南相馬」も同時開催

2021年12月22日

10月30日、31日の両日、南相馬市と浪江町の福島ロボットテストフィールドにて、「第2回ロボテス縁日~ロボット・ドローン大集合〜」が開催された。ロボットやドローン(小型無人機)の研究開発に携わる企業・団体が出展し、県民向けに成果を披露。会場には家族連れも多く、ロボット・ドローンの操縦やプログラミングなどに挑戦する子どもたちの姿が見られた。また初日には、「風とロックCARAVAN福島㏌南相馬」も同時開催され、万全のコロナ対策のもと、多くの観客がクリエイティブディレクター箭内道彦さんとゲストによるトークと音楽を楽しんだ。

メイン会場となった南相馬市の福島ロボットテストフィールドの研究棟

ロボット・ドローンは、浜通り地方の産業再生を目指す福島イノベーション・コースト構想(イノベ構想)の主要プロジェクトのひとつで、南相馬市と浪江町にある福島ロボットテストフィールド(以下RTF)は、その中核を担う施設だ。このRTFを会場に、10月30日、31日の2日間、「第2回ロボテス縁日~ロボット・ドローン大集合」が開催された。

メイン会場となった南相馬市のRTFには、ロボット・ドローンの研究開発に携わる13の企業・団体が出展。各種展示のほか、操縦体験、プログラミング体験、マッスルスーツ装着などができるブースが設けられ、朝から多くの関連事業者や家族連れなどで賑わった。

多くの来場者で賑わう会場

また、今年は約13キロ離れた浪江町にも会場が設けられ、RTF浪江滑走路での燃料電池車「新型ミライ」の試乗やドローン操縦体験を実施。さらに、同町内の福島水素エネルギー研究フィールドの視察や道の駅なみえでの「水素教室」も行われた。

「ロボテス縁日」の実行委員会事務局を務める福島民報社の菅野さんに、開催目的をうかがった。

浜通り創生・復興イベント実行委員会事務局(福島民報社地域づくり局産業振興部長)の菅野龍太さん

「『ロボテス縁日』は、ロボット・ドローン関連企業・団体の皆さんがビジネスパートナーを広げる場であると同時に、地域住民のみなさんにロボテスへの理解を深めていただく機会でもあります。地域の新しい産業の柱であるロボットやドローンに実際に触れることで、特にお子さんたちにはぜひ興味をもっていただきたいですね」

その狙いどおり、会場には子どもたちの姿もたくさん見られた。人気のひとつが、屋内水槽棟で行われた「水中宝探し」 。ここは水中・水上ロボットの点検や試験を行う施設で、水深7メートルの大水槽がある。「水中宝探し」は、アームを装着した水中ドローンを操縦して、この水槽に沈んだ「お宝」を引き揚げるというものだ。

広々とした屋内水槽棟で行われた「水中宝探し」

「人が潜らなくてよいため安全性やコスト面で優れる水中ドローンは、水中構造物の点検や、魚の養殖場の管理などに幅広く利用されています」と語るのは、お宝探しを企画した株式会社スペースワンの長尾さん。

株式会社スペースワンのドローン事業部 長尾友貴さん

スペースワン社は郡山と東京でドローンスクールも運営しており、これまでの修了生は400名を超えるそう。受講生は今のところ圧倒的に男性の方が多いとのことだが、最近では女性や若年層の操縦士も続々と誕生しているようで、「ドローン操作には繊細さと丁寧さが求められるため、実は女性の方が向いているかもしれない」のだとか。

ちょうど、研究棟入口で行われていた空中ドローン操作体験に、福島市からお母さんと来場したという小学生の女の子が挑戦していた。小型のトイドローンを操縦して、制限時間内に3カ所のポートに着陸させる、というゲーム。感想を聞くと、「難しかったけど3つとも着陸できてよかった」とうれしそうだった。

真剣な面持ちでドローン操縦にトライする女の子

屋内の展示の中でひときわ存在感を放っていたのが、災害対応ロボット「MISORA」だ。南相馬ロボット産業協議会が開発したもので、10月初めに開催された「ワールドロボットサミット2020」福島大会では、インフラ・災害対応カテゴリーの「災害対応標準性能評価」部門で堂々の2位に輝いた。

同協議会の事務局を務める株式会社ゆめサポート南相馬の木村所長にうかがった。
「MISORAは地元・南相馬市の企業11社が力を合わせて作った災害対応ロボットです。WRSは初めての競技会出場、しかも部門ファイナリスト6チームのうち5つは大学で、事業者チームは私たちだけでした。それでも受賞できたことで、南相馬の地元企業の技術力を全国へ、世界へ発信することができました。こうした機会を通じて地域の人たちにも、身近な会社の優れた技術を知ってほしいですね」

株式会社ゆめサポート南相馬の取締役所長 木村浩之さん

会場内にはこのほか、マッスルスーツやお掃除ロボットなどの展示、ロボットのプログラミング体験ができるコーナーなどがあり、子どもからお年寄りまで楽しめる内容でいっぱいだった。

学習ロボット「メカトロウィーゴ」のプログラミングに挑戦する子どもたち

ロボテス縁日に出展したのは、企業や大学だけではない。飲食コーナーでは、浜通りの高校生たちがイノベ構想にちなんで開発した弁当、その名も「ふくしまイノべんとう」が販売されていた。南相馬市の県立相馬農業高校、いわき市の県立磐城農業高校、県立小名浜海星高校の3校の生徒たちが、それぞれ地元の食材や、自校が運営する植物工場で栽培した野菜などを使用し、3種類の弁当に仕上げたそう。

相馬農業高校バージョンの一押しは、南相馬市萱浜(かいはま)地区に伝わる郷土食「ベンケイ」を使ったメニューとのこと。開発に携わった西内さんによると、「ベンケイは大根・芋がら・唐辛子を醤油と酢で炒め煮したもので、とてもご飯に合います。大震災後は作る家庭も少なくなっていましたが、家庭科の先生に教わり、自分たちでも調査して復活させました」

「イノベんとう」相馬農業高校バージョン。ベンケイは左上。他にベンケイの入ったグラタンやポテトサラダも

あとの2つは磐城農業高校と小名浜海星高校が共同開発したバージョンで、メカジキやサバといったいわきならではの水産物がメインに使われている。磐城農業高校の白石さん、小名浜海星高校の佐治さんは、「コラボは大変だったけれど、地元の産品を生かしながら、子どもからお年寄りまでおいしく食べてもらえるメニューを工夫しました」と話してくれた。

左から、磐城農業高校の白石美鈴さん、小名浜海星高校の佐治亜美さん、相馬農業高校の西内麻尋さん

30日の午後からは、メイン会場の一部で「風とロックCARAVAN福島㏌南相馬」が開催された。これは郡山市出身のクリエイティブディレクター箭内道彦さんが中心となって企画・運営するトークショー・音楽ライブで、ラジオ福島が放送。2013年12月からほぼ毎月、県内59市町村を巡って故郷の魅力を発信してきたが、コロナ禍で休止していたため、今回が1年8か月ぶりの公開生放送となった。(当日の様子はこちらでご覧になれます。https://www.youtube.com/watch?v=sovA_PxttOU&t=71shttps://www.youtube.com/watch?v=q-TRLC2b_ZQ)

会場には事前申し込みをした多くのファンが来訪。感染拡大防止のため客席とステージの間はビニールカーテンが設置されていたが、箭内さんが放送開始直前まで観客に声をかけていたのが印象的だった。

前半のゲストは南相馬市の門馬市長、福島イノベーション・コースト構想推進機構の伊藤専務理事、そして県立相馬農業高校食品科学科3年の鈴木さん。

左から箭内道彦さん、門馬和夫さん、伊藤泰夫さん、鈴木愛佳さん

門馬市長は、「若者が少ないという地域課題に取り組んできた成果が少しずつ出てきています。2020年の国勢調査では前回調査と比べて市人口が微増し、特に女性の数が増えました。新しいことにチャレンジする若者が増えています。これをもっと増やすための環境を整備していきたいと考えています」と語った。

伊藤専務理事は、「ロボットやドローンは難しいものではなく、もっと身近に感じてほしいテーマです。イノベ構想の実現のためには多くの人に関わってもらえたらうれしいです。ロボテスを中心に内外の人が集う場所をつくり、そこからイノベーションが生まれてほしい」とコメントした。

前述の「イノベんとう」開発チームの一人、鈴木さんは、イノベんとうのおかずの中ではベンケイを使ったグラタンが一押しだそう。将来について、「こうした経験を活かして調理師の資格をとり、飲食業に就きたい。できればお店も持ちたい」と夢を語ると、箭内さんから「開店初日に食べに行きますよ」と応援の言葉があった。

続いて、バンド「音速ライン」のボーカル・ギター藤井さん(いわき市出身、郡山市在住)、郡山市を拠点に活動するバンド「ひとりぼっち秀吉BAND」がステージに立ち、トークとライブを繰り広げた。

箭内道彦さんと藤井敬之さんのトーク&ライブ

浜通りの新産業の柱の一つ、ロボット・ドローン。ロボテス縁日のような親しみやすい催しを通して多くの地域住民がその可能性に触れることで、子どもたちの将来の夢もきっと広がることだろう。RTFが広げる未来への期待も高まるイベントだった。

ロボテス縁日

福島県南相馬市の「福島ロボットテストフィールド(RTF)」を会場に、ロボット・ドローン産業を担う企業・団体が集うイベント。2020年から開催。浜通り地方の産業再生を目指す福島イノベーション・コースト構想の主要プロジェクトであるロボット・ドローンと、ロボテスへの県民理解を深めるのが狙い。地元自治体、経済団体、福島民報社などが浜通り創生・復興イベント実行委員会を結成し、福島イノベーション・コースト構想推進機構が共催する。