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世界を変える、福島のチカラ「Hama Tech Channel」 福島イノベ機構

お米から作ったプラスチックで
環境問題と農業問題を解決していく
――ライスレジン・奥田真司氏、飯田祥平氏インタビュー

2026年10月30日

奥田 真司さん

株式会社ライスレジン 代表取締役COO

高知県出身、青山学院大学経営学部卒業。
2006年に野村證券株式会社に新卒入社。富裕層向けのリテール業務や、上場企業などの法人向けコンサルティング業務、また本社での戦略企画業務に従事。2020年5月よりライスレジン事業に参画。グループ内関連企業役員を経て、2024年7月に株式会社ライスレジン代表取締役COOに就任。

飯田 祥平さん

株式会社ライスレジン 営業グループ ヘッドマネージャー

医療・設備関係企業を経て株式会社グリージョンに入社。現在、グループ会社の株式会社ライスレジンで営業グループヘッドマネージャーを務める。自治体指定ゴミ袋の提案や企業と進めるオリジナル製品・ノベルティ提案など、お米由来プラスチックの販路拡大を担う。

食用に消費されなかったお米を原材料にプラスチックを作る――そんな夢のようなビジョンに取り組んでいるのが、株式会社ライスレジンだ。2022年12月、福島県双葉郡浪江町に自社工場を建設し、福島から全国へと事業を展開している。同社が生産するバイオマスプラスチック「ライスレジン」は、お箸、スプーン、タンブラー、お皿、ゴミ袋、ノベルティーなど幅広い製品に使われている。同社の福島への思いや今後の活動について、代表取締役COO奥田真司氏と営業グループヘッドマネージャー飯田祥平氏に話を聞いた。

地元企業と新工場を立ち上げ福島発のビジネスを全国に展開

―石油由来のプラスチックの代替素材であるライスレジンを、福島で生産するようになった経緯をお聞かせください。

奥田:
元々は2018年から新潟の南魚沼市で別会社としてライスレジンの生産をスタートさせました。米どころを拠点に、食用に適さない米を再利用するのが狙いでした。事業拡大のために全国展開をすることを目指していた時に、同じ米どころの福島に目をつけました。

株式会社ライスレジン 代表取締役COO 奥田 真司 氏

ただ、小規模なベンチャー企業が自前で複数の工場を造るのは難しいため、賛同してくれる地元の企業とパートナーシップを組んで一緒に新しい会社を立ち上げて、拠点を増やしていくという構想を持っていました。それに手を挙げてくれたのが、株式会社グリージョン(旧:相馬ガスHD)でした。
2021年7月に共同で法人を立ち上げ、浪江町で準備を進めたのち、2022年12月に浪江工場が竣工し、福島でのライスレジン生産をスタートさせました。その後、南魚沼から営業部門や研究開発部門も引き継ぎ、2024年7月には社名を現在の株式会社ライスレジンに変更しています。

浪江工場

ライスレジンの製造ライン

―米を原料とするバイオマスプラスチックであるライスレジンを作ろうと考えたのはなぜなのでしょうか。

奥田:
石油由来のプラスチックの使用が大きな環境問題になっていることはよく知られていますが、有効な代替素材がないことが問題の解決を阻んでいます。もし日本人の主食であるお米を活用できれば、減少傾向にあった米の消費拡大と、食用に利用できず廃棄される米の有効活用を同時に実現し、環境問題だけでなく、耕作放棄地の拡大やお米離れ、農家の減少など、日本の農業課題の解決にも寄与できると考えました。
ライスレジンは、政府備蓄米や古米など、食用として消費されなかったお米と、石油系プラスチックを掛け合わせて作る“お米の環境素材”です。原料にお米を使用する分、石油の使用量を減らすことができ、バイオポリエチレンと比べてシンプルな製造工程で、なおかつ、小規模な設備で生産できるため、消費電力も抑えられます。

※ 新市場開拓米制度とは、輸出や業務用、飼料用など、従来の家庭向け市場以外でのお米の需要拡大を支援する制度です。

しかし、特有の難しさもあります。まずは製造技術です。本来は水と油のような関係にあるお米とプラスチックを混ぜて、製品化するのは簡単ではありません。特にお米は種類によって品質が異なるため、一定の品質を再現するには特殊なノウハウが必要になります。
また、原材料の安定的な調達も問題です。ライスレジンには、政府の備蓄米や消費されなかった古米、破砕米、くず米などの他、ライスレジンの原料向けに作られる資源米が使用されています。この資源米の生産には、主食用米以外の新たな需要先に向けた米の生産を支援する制度が活用されています。
また、安定的にお米を仕入れるために、政府に働きかけてバイオプラスチック向けの備蓄米の買い取りの枠組みを作ってもらいました。2023年から3カ月に一度、5年を経過した備蓄米の入札が行われるようになりました。入札に当たっては、当社が持つ特許技術やノウハウを強みとして生かしています。

一方で、資源米の確保のために、農家の皆さんにライスレジン用のお米づくりを働きかけてきました。今では協力してくれる農家さんが北海道から九州まで日本全国に広がり、多い年では年間約250トンが収穫できるようになり、特に福島県の浪江町や飯舘村ではサッカーコート約30面分に相当する21.48ヘクタールで資源米が作られました。
休耕田や耕作放棄地でおいしいお米を作るのには土壌改良が必要で、3年から5年かかるといわれています。その期間はライスレジン用のお米を作って、食用のお米を作るのに適した土壌になった時点で切り替えることが、日本の美しい田園風景を取り戻すことにつながると考えています。

ご縁が重なったことから浪江町を建設候補地に選定

―全国に新工場の建設候補地があったはずですが、福島の浪江町を選んだ理由は何だったのでしょうか。

奥田:
ライスレジンは環境問題という社会課題に貢献できる新しい事業であり、国内に供給元を持つなら、やはり米どころであることが重要です。震災からの復興に取り組む福島県は米どころであり、お米に対する関心が高いのは知っていました。特に被害が大きかった浜通り地域を支援できるのであれば、社会的にも大きな意味があると考えていました。
当時、浜通りには原発事故によりお米に対する風評被害もあって、お米を作っても売りづらいという話も地域の人から聞いていたので、余ったお米を買うと手を挙げれば、お米づくりが再開しやすいのではないかと考えました。2020年の後半あたりから浜通りの自治体を回って、事業のご説明をして、工場の用地や補助金の活用などの情報を収集するようにしてきました。
そんなタイミングで、浪江町で新しい工業団地に入居する企業を募集しているという話を聞きました。まだ入居する企業が決まっていないということだったので、最初に入居するのであれば区画を選ぶのにも有利ですし、国の補助金を受けることもできそうだということで、浪江町に決めました。
タイミングが合ったことが何よりでしたが、浪江町が考える産業団地のストーリーにも賛同できましたし、町の熱意みたいなものも感じることができたのも大きかったです。2021年には浪江町に決めて、地元のパートナー企業と一緒に補助金の申請もしました。

―パートナー企業とはどのようなつながりがあったのでしょうか。

奥田:
パートナー企業とつないでくださったのは、浪江町にある双葉不動産の代表である石田全史さんです。石田さんとは、2020年に日本青年会議所の会頭を務められていた際、様々な機会を通じてライスレジンの取り組みを知っていただき交流が生まれ、地元・浪江町への進出に際してもご支援をいただきました。南相馬の株式会社グリージョンが環境に貢献できる事業をやりたいと考えていると紹介されて、一緒に新会社を作ることになりました。
新しいことを始めるには、当然、何をやりたいのかということも大事ですが、タイミングというか、ご縁が大切だと思っています。その意味で、当社が浪江町に新工場を造らせてもらったのは、まさにご縁があったということでしょう。

ナフサ問題で風向きが変わり注目度が一気に高まった

―ライスレジンの事業は順調に伸びているのでしょうか。

奥田:
これまでは価格が高かったことがネックで、石油系プラスチックの1.2倍から2倍程度するため、採用する企業は限られていました。しかし、モスバーガーが自社のモスファーム熊本で栽培された資源米を原料にモスバーガーの店舗で使用するカトラリーに採用し、そのことが資源循環の取り組みを実現できるとして評価をいただきました。
また、風向きが変わったきっかけは、原油価格の高騰でした。中東情勢の緊張などにより石油供給が不安定になったことで、原油由来の資材価格が上昇し、ナフサ価格の上昇懸念が高まり、石油関連の製品価格が軒並み高騰しました。
ライスレジンも原料の一部に石油系プラスチックを使っているので影響を受けますが、限定的です。お米率50%のライスレジン樹脂では、約40%のCO2が削減でき、お米率が70%であれば約57%削減できます。国産米を使って、国内工場で生産していることから、メディアに取り上げられる機会が増えて、多くの方から注目されるようになり、問い合わせが急増しました。
特に多かったのは、自治体のゴミ袋の問い合わせです。2026年度調達分の入札が不調になったり、原材料が不足し、必要分が確保できない状況も生じていました。そこでライスレジンに問い合わせをする自治体が増えてきました。

飯田:
問い合わせが増えて喜ばしい一方、まだまだ駆け出しの企業のため、少人数の営業担当者で対応しており、手分けして効率的に対応することにしています。2人で問い合わせ先を訪問し、詳細なご要望をお聞きした上で、価格などの提案内容を社内で練り上げてご提案しています。

―実際にはどのような製品が作られているのでしょうか。

飯田:
ライスレジンが主に使われているのは、オリジナル製品、ワンウェイ製品、袋製品、ノベルティー製品の4つの領域です。
オリジナル製品は各社から相談を受けてパートナー企業と製品を開発するもので、お米のおもちゃシリーズやダイヤブロック®「OKOMEIRO」シリーズなどがあり、使い捨てを前提としたワンウェイ製品としては、アメニティや使い捨てカトラリーなどシンプルなオリジナル製品を用意しています。

ワンウェイ製品

袋製品

引き合いが増えている袋製品では、最近、浪江町、地元の中学校、ライスレジンの3者がコラボしてオリジナルエコバッグを作成しました。今後、道の駅なみえなどで使用されます。ノベルティー製品としてはロゴやネームを入れたボールペンやうちわ、クリアファイルなどのオリジナル製品を開発して、提供しています。
1年前に東京に拠点をオープンしたことが、こうした事業展開の後押しになっています。東京は多くの企業の本社が集中しているだけに、企業とのつながりがつくりやすく、自治体や企業が集まるイベントに参画することでそのつながりを広げることができるようになりました。環境問題への意識の高まりも相まって、営業しやすくなっています。
一方で、仙台市×東北大学スマートフロンティア協議会に加盟して、スマートシティの実現を目指すプロジェクトへの参加を通して、仙台市や東北大学、宮城県内の金融機関やテレビ局などとのつながりを広げつつあります。大学の先生の監修や助言をいただくことで、ライスレジンの信頼性の向上が図れるというメリットも期待しています。

株式会社ライスレジン 営業グループ ヘッドマネージャー 飯田 祥平 氏

奥田:
お米をベースとしている事業ですので、農業や食品の関係団体や企業との連携も強化しています。特にJAとは当社の技術を広げていくための連携を図っていきたいと考えています。

地元の大学や企業と連携して全国への販路拡大を目指す

―浜通り地域との連携についてはいかがでしょうか。また、福島イノベーション・コースト構想推進機構(以下、福島イノベ機構)の存在はどのようにお考えでしょうか。

奥田:
やっとこの春(2026年)から双葉郡内すべての8自治体でゴミ袋を採用していただいたところで、これをきっかけに連携を強化していこうと考えています。工場の製造部門では南魚沼市からの移住者も含めて10人弱を採用しましたが、事業の拡大に合わせて地域からの雇用を増やしていきたいです。

飯田:
福島イノベ機構には、イベントや商談会に誘っていただき、地元の企業とのつながりをつくる後押しをしてもらっています。ノベルティーの発注をいただいたという実績も上がっています。外部から入ってきた企業にとって、福島イノベ機構は福島県庁や県内の企業とのつながりをつくるには欠かせない存在です。
今後は自治体の方々へのライスレジンの認知度アップのための仕掛けづくりや、環境問題に関する啓発などの機会を強化していただけると助かります。県外の自治体や企業の視察の受け入れもつながりを広げる良い機会になるので、積極的に受け入れを増やしてほしいと思います。

―今後の展開についてはどうお考えでしょうか。

奥田:
ライスレジンの技術面や原材料調達の難しさはクリアできたので、あとは販路をいかに拡大していくかが課題です。モスバーガーや自治体のゴミ袋のように採用事例を積み上げて認知度を向上させ、消費者の方にも知ってもらって需要拡大につなげていきます。
日本人にとって最も身近なお米から作られるライスレジンは、様々な課題の解決につながる可能性を持つプラスチック素材です。それが至る所に広がり、当たり前のように使われる世界をつくっていくことが私たちの目標です。自動車部品や食品包装といった領域へも販路を拡大していきます。
同時に、東北大学などの教育・研究機関との連携も視野に、ライスレジン自身の機能の高度化にも取り組んでいきます。まだ市場が未成熟ですが、生分解性樹脂の開発のノウハウは持っています。農業用マルチシートや漁業用具など、回収が困難な環境で使用される製品には分解性プラスチックが適しています。
分解性プラスチックや米の含有率の向上など、ライスレジンの機能の高度化については、現在進められている福島国際研究教育機構(F-REI)との連携も有効だと考えます。今後はさらに福島との連携を強化して、バイオマス分野での連携と技術関与を図り、徐々に機能を高めていきます。今後の事業展開にもご期待ください。

株式会社ライスレジン

食用に適さない米や廃棄される米を活用したバイオマスプラスチック「ライスレジン」の研究開発・製造・販売を展開。2021年の創業以来、技術開発を重ね、石油系プラスチックの使用量削減とCO2排出抑制に貢献している。近年は全国の自治体や地元企業とパートナーシップを組み、地域活性化や耕作放棄地の再生といった農業・地域課題の解決にもつながる持続可能な循環型ビジネスを推進している。

Hama Tech Channelとは

「世界を変える、福島のチカラ」のもと、山積する社会課題に立ち向かい、
豊かな未来を切り拓くリーダーとテクノロジーにフォーカス。
「社会を良くする」力強い変革を応援する、福島発・未来共創型メディアです。
ここでは、東日本大震災と原子力災害からの復興を目指す国家プロジェクト
「福島イノベーション・コースト構想」の一環として、
地域の未来を切り拓く取り組みを発信しています。

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