福島イノベーション・コースト構想

【活動報告】令和7年度 「 第2回スタートアップ創出事業スタートアップツアー」を開催しました

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福島イノベ機構では、10月23日(木)~24日(金)、1泊2日で「航空宇宙、エネルギー・環境・リサイクル」をテーマとした令和7年度第2回スタートアップツアーを15名の参加者と共に開催いたしました。

様々な先進企業の訪問に加え、スタートアップを支援する地域の機関やコミュニティの方々のお話も伺うことができ、参加者した皆様にも非常に満足していただけたツアーになりました。

 

以下、ツアーの様子を写真とともに簡単にご紹介いたします。

【第2回スタートアップツアーの様子】

【1日目】

■株式会社ライスレジン(旧バイオマスレジン)/浪江町

食用に適さないお米を使ってバイオマスプラスチック(ライスレジン)を製造し、食器や歯磨き用品、子どものおもちゃ、ごみ袋、さらに各市町村のリサイクル袋・レジ袋などのプラスチック製品に活用することで、地球環境問題の解決に貢献しています。
また、原材料となるお米は、周辺地域の耕作放棄地を活用して生産され、地域の復興にもつながっています。
(株)ライスレジン様の環境問題への取り組みや地域復興への姿勢に、参加者一同大いに感銘を受けました。さらに、環境素材であるライスレジンが「FUJI ROCK FESTIVAL」のごみ袋などに採用されていることを知り、ライスレジンをより身近に感じることができました。

ライスレジンの製造・用途についての講義
環境素材ライスレジンの製造工場

■AstroX(アストロエックス)株式会社/南相馬市

AstroX社は、衛星打ち上げロケット不足を解決し、「誰もが気軽に宇宙を使える未来」を実現するため、気球で成層圏までロケットを運び、そこから空中発射を行う「ロックーン方式」の打ち上げを開発しています。
当日は、同社エンジニアの猪俣様より、打ち上げの原理や、なぜ「ロックーン方式」が衛星打ち上げに最適なのかといった点について、わかりやすく、そして熱量たっぷりにご説明いただきました。
また、参加者一人ひとりが実際のロケットを持ち上げ、その軽さから同社の高い技術力を実感することもできました。

エンジニアから直接説明を伺う
実際のロケットを持って記念撮影

■テトラ・アビエーション株式会社/南相馬市

「人々が自由に空中を移動する社会の実現」を目指し、空飛ぶクルマ「eVTOL」の開発に取り組むテトラ・アビエーション(株)の中井社長からは、「なぜ空飛ぶクルマなのか」、「未来はどのような社会になっているのか」、「その中でテトラ・アビエーションはどこに位置し、どこを目指すのか」といった点について、情熱的なお話を伺いました。参加者全員がその語りに強く引き込まれました。
また、工場見学では、実際の空飛ぶクルマを間近で見ることができ、空飛ぶクルマ社会が現実に近づいていることを実感する貴重な機会となりました。

空飛ぶクルマについての講義
空飛ぶクルマの工場見学、記念撮影

Odaka Pioneer Village/南相馬市

避難指示区域であった小高区にいち早く帰還し、「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」というスローガンを掲げ、マイクロスタートアップの集積拠点を創った和田代表。
講演では、淡々とした口調ながらも、参加者の心に響く形で、「どのように考え、どのような行動を起こして、歴史や地域に根付いた事業をゼロベースから創出したのか」「新しいコミュニティを生み出し、事業を創出する仲間や働き手を増やしていった歩み」「今後の取り組み」について語っていただきました。
参加者の皆さんは、講演直後こそ息を呑むように和田代表の話に聞き入り、その静かな熱量に圧倒されていました。その後、「自分だったら…」と自分事として考えるきっかけになったという声が多く聞かれ、心に残る時間となりました。

代表による聴く者を圧倒するご講演
熱量に圧倒されながら聴講する参加者

■ジョワイストロナミエ/浪江町

恵比寿で創業50年の名店「ダルブル」の無藤シェフが、浪江の食材の美味しさや新鮮さに惚れ込み、移住して出店したフレンチ料理店「ジョワイストロナミエ」。
地元の旬な食材を活かした独創的な料理への想いや、地域の皆さんへの思いについてお話いただきました。
参加者は、当日入荷した旬の地元食材を使った美味しい料理を味わいながら、いたるところで輪になり、年代やキャリアを超えた交流を楽しんでいました。

シェフ 浪江での食に対する想いを語る
美味しい食事をいただきながら会話が弾む

【2日目】

FH2R(福島水素エネルギー研究フィールド)/浪江町

「水素によるまちづくり」を掲げる浪江町にある世界最大級の水素製造拠点で、浪江町職員の藤田様から、難しい水素製造の原理や浪江町での実証の状況について、映像やジオラマを用いながら、誰でも理解できるように非常にわかりやすくご説明いただきました。
また、本年度FTC採択者のうち水素関連3社との関わりについても紹介され、浪江町がスタートアップ企業に対してどのように寄り添った支援を行っているかも、参加者に伝えていただきました。

藤田さん(中央)が、分かりやすく説明
施設見学中も沢山の質問する参加者

■請戸小学校/浪江町

東日本大震災時の津波で1階部分が完全に流されながらも、全員が無事に高台へ避難したエピソードで知られる請戸小学校(震災遺構)の当時の姿を目の当たりにし、参加者の皆さんも言葉を失っていました。
参加者は予定時間を超えるほど熱心に、説明パネルや展示物、動画を見入っていました。

1階:真剣に説明パネルを読む参加者
2階:寄せ書きの黒板

■ナミエシンカ/浪江町

隈研吾氏がデザインしたトレーラーハウスを活用した、登録すれば誰でも無料で利用可能なコワーキングスペースでは、イベントやワークショップも活発に行われています。

今回のツアー参加者の中にも、過去にナミエシンカのワークショップに参加した方が2名いらっしゃいました。

 
 
木造トレーラーハウス
登録すれば無料で使用可能

中間貯蔵事業情報センター/大熊町

「CREVAおおくま」内にある中間貯蔵事業、除染土壌等の復興再生利用及び県外最終処分をはじめとする福島の復興・環境再生の取組を発信する施設で、東電スタッフの方から、中間貯蔵施設に行く前の基礎的なことをわかりやすく教えて頂きました。
多くの参加者は、「放射能汚染の影響度」や「復興の今」、「除染作業・貯蔵作業」の難しさや大変さ、「中間貯蔵施設・除染土壌」の安全性などを、今回の説明映像と説明を聞いたことで初めて正しく理解することができました。

中間貯蔵施設を見る前の事前レクチャー

中間貯蔵施設/大熊町

参加者は、東京ドーム11杯分の除染土壌や、原発事故当時のまま残されている高齢者施設などを見学し、実際に除染土壌の上に立って放射線量を測定することで、影響の大きさや、安全を確保するための努力、復興への長い道のりなどを、あらためてリアルに感じることができました。

中間貯蔵施設から第一原発を望む
中間貯蔵の現場で説明を受ける

■(株)福島ミドリ安全 いわき支店((株)エナジア)/いわき市

東日本大震災後、既存顧客8,000社のうち半数の4,000社が失われた中で、白石社長は今後の会社の方向性を見極めるため、単身ヨーロッパで学びを重ねました。「これからは小規模自立分散型のエネルギーが必要だ!」という決意を胸に帰国し、ミドリ安全本社ではエネルギー業務が行えなかったことを契機に、東日本大震災を踏まえてレジリエンスなローカルモデルの構築と、新たな「産業創出」「コミュニティ創出」を目的として(株)エナジアを設立され今年で14年目を迎えます。
設立時から現在までに開発・導入した数多くの「エネルギーシステム」の紹介から、「未来のまちづくり・水素社会」に至るまで、想いを込めて熱く語っていただきました。また、施設見学では、中古のEV車搭載電池を活用した蓄電システムや、VRを活用した安全教育システムの説明・実演も行っていただきました。
参加者一同、白石社長の熱いお話に圧倒されるとともに、非常に感銘を受け、ツアーを締めくくることができました。

白石社長のエネルギーにかける想いの講義
蓄電システムを見ながら説明を受ける

【参加者の声】

 参加の皆さんからとても多くの声を頂きました。その一部をご紹介させていただきます。

◆浪江町から世界を相手にしている、というのが印象的だった。
◆世界初を福島で成し遂げようとしている企業理念とそこに参入したくなる仕組みが大変高専生の心をくすぐった。
◆「宇宙開発で“Japan is No.1”を取り戻す」という熱い思いに共感しました。これまで宇宙開発は大企業や資金力のある企業だけが取り組むものだと思っていましたが、スタートアップでも実現できることを知り、大きな刺激を受けました。何事にもチャレンジできる可能性を感じました。
◆代表自ら事業やコンセプトについてご説明いただいたことで、事業にかける熱量や想いの大きさに触れることが出来ました。製品が実現した未来へのワクワク感、それに向かう会社の姿にとても刺激を受けました。
◆和田さんの志に強く刺激を受けました。今回の学びを通じて、私はスタートアップよりも、スモールビジネスや持続可能な地域づくりの姿にこそ共感し、その実現を目指したいという思いをあらためて確かめました。
◆起業のあり方を根底から考え直すきっかけとなった。学んだことを書ききれないが、もう、その…高専で講義してください。
◆情報が滝のように流れてきて終始困惑したが熱い講演を聞くことができて満足しました。
◆ジョワイエストロナミエでのフレンチ、地元食材で作られた料理が最高でした。料理がきっかけで会話も広がり、参加者同士のつながりが深まった懇親会になりました。
◆交流の中で皆さんが優しく接してくださったり、大学生院生社会人の方々の経験を伺えて大変有意義だった。
◆先端技術、スタートアップに触れるツアーとして満足度が高い1日目でした。複数の志ある事業、人に触れることが出来た貴重な機会となりました。時間の都合上しょうがないことなのですが、それぞれの会社さんでの滞在が短くなってしまったことが残念でした。
◆初日から各分野の新規事業を直接見て実情やこの地で戦う姿を見て、この街に住みたいと思ったし、心に熱が灯った感じです。
◆無料でありながら、これほど素晴らしいサービスを提供してくださり、スタッフの皆さんもとても親切で温かく、全体を通して多くを学ぶことができ、本当に幸せに感じています。
◆訪問先の皆さまのお話や取り組みを通して、多くの刺激と学びを得ることができました。特に現場での実践的な内容が印象的で、今後の事業にも活かせるヒントがたくさんありました。
◆行政がしっかりと研究・実証やスタートアップの支援を行っていることを知れた。またエネルギーの新たな挑戦をこの地で行っていることをうれしく思った。
◆再生可能エネルギーを活用して水素を製造し、貯蔵・供給までを一体的に行う仕組みを実際に見ることができ、とても印象的でした。今後のエネルギー政策や脱炭素社会の実現に向けたモデルとして大変参考になりました。
◆震災当時の状況をそのまま残した校舎を見学し、当時の避難経路や先生方の判断の重みを改めて感じました。実際の校舎を含めた展示や被災された方へのインタビュー動画など、深く心に残る視察でした。
◆震災遺構に行ったのは初めてだったのですが、実際に体験し、福島の復興に貢献したいという思いが強まりました。
◆汚染土壌の現状を身をもって感じられ、大変良い機会でした。
◆放射性廃棄物の保管や安全管理について、実際の現場を見学しながら丁寧な説明を受けることができました。国としての取組の規模や、現場で働く方々の使命感を感じ、復興の現実を理解する貴重な機会となりました。
◆一日を通して、震災の記憶と復興の現在を両面から学ぶことができ、非常に有意義な視察でした。各地で異なる課題や取り組みを知ることで、福島全体の再生プロセスを立体的に捉えることができました。説明者の方々の熱意や誠実さにも心を動かされました。
◆ぜひ勧めたいと思います。今回のツアーでは、福島の復興への取り組みや最先端技術の実証事例を直接見ることができ、多くの学びと刺激がありました。また、参加者や現地の方々との交流を通じて、新しい視点やつながりを得ることができたのも大きな魅力でした。
◆きっと、同級生のほとんどはよい大学に行きよい企業に就職できれば良いと考えていると思う。自分もその一人だった気がする。しかしながら、そのように考えるのは起業という選択肢を、地元を知らないから至るものだと思う。我が国を次の世代に良い形で遺すためには短期的な自己利益を追求するよりも、公益に尽くし最終的に自分も周りも幸せになる方法を選ぶ必要があるのではないか。その方法こそ起業や地元で自分で考え生き抜くことにあると思う。このように考えるきっかけは、ツアーのおかげであるし、日本を良くするには皆がこの事を知る必要があるから。
◆二日目を通して災禍とその復興の実情を知るとともに、今後の開発の形についても分かってきた。いつか、この地の発展に寄与したい。絶対に

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【お問い合わせ先】

(公財)福島イノベーション・コースト構想推進機構
    産業集積部 事業創出支援課
    電話024-581-7045
メール:Startup-tour@fipo.or.jp