福島イノベーション・コースト構想

【活動報告】令和7年度 「 第3回スタートアップ創出事業スタートアップツアー」を開催しました

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福島イノベ機構では、11月28日(金)~29日(土)の1泊2日で、「医療・農林水産業」をテーマとした令和7年度第3回スタートアップツアーを、15名の参加者の皆さまと共に開催いたしました。今年度最後のツアーとなった今回も、イノベ地域で挑戦を続ける事業者の方々から、今回も熱意あふれる取り組みや想いを伺うことができました。また、農林水産業をテーマとしたツアーならではの、挑戦者の皆さまが手がけた果物やお肉の試食もあり、参加者からは「充実した内容だった」とのお声を多くいただきました。以下、当日の様子を写真とともに簡単にご紹介いたします。

【第3回スタートアップツアーの様子】

【1日目】

■中間貯蔵事業情報センター/大熊町

「CREVAおおくま」内にある同センターでは、東電スタッフの方より、中間貯蔵施設の概要や除染土壌の安全性、最終処分に向けた取り組みについて、非常に丁寧にご説明いただきました。中間貯蔵事業を身近に感じる機会が少ない参加者も多い中、バーチャルシアターでの解説や、模型を用いた最終処分方法の説明などもあり、全員が中間貯蔵事業への理解を深めることができました。

没入感のあるバーチャルシアターでの説明
模型を使ったわかりやすい説明

■株式会社デジラボホールディングス(協業者:株式会社AILE)/楢葉町(於:OIC)

楢葉町を拠点に4県6地域で活動する(株)デジラボホールディングスは、「人手不足で困らない地域を創る」「社会コストを減らす」をコンセプトに、自治体・事業者の業務効率化支援やITサービスの開発を行っています。今回は、同社の上田様より、「なぜ小さな町がアイデア実証に向いているのか」「小さな町で磨いた取り組みが他地域展開に効果的な理由」などについてお話しいただきました。

また、(株)デジラボホールディングスと共同でスマホ向け「AIフレイルチェック」アプリを開発し、楢葉町で実証を進めている(株)AILEの平山様からは、医療系アプリ開発の狙い、実証までのプロセス、実証結果などをご紹介いただきました。

参加者からは、自身のアイデアやビジネスの参考にしたいと、積極的な質問が寄せられていました。

社会課題を楢葉町で実証し、全国へ展開
積極的に質問をする参加者

■大熊インキュベーションセンター/大熊町

入居企業が150社を超える小学校をリノベーションした人気のインキュベーション/コワーキング施設である「大熊インキュベーションセンター」について、各種施設の説明や施設内で実証を行っているFTCの過去採択企業の(株)AIBODの紹介をしていただきました。

施設訪問後、さっそく1名の参加者が大熊インキュベーションへの入居を表明していました。

施設の説明
実証(AIBODストア)の説明

■株式会社ReFruits/大熊町

大熊町で、震災前の特産品であったキウイ栽培を再生し産業として育てるべく移住し、日本を代表する農業企業を目指している(株)ReFruitsの阿部様より、災害が土壌に与えた影響、それを克服して再生へとつなげてきた過程、今後の展望などについてお話しいただきました。
 今年11月1日に、地域の皆さんを巻き込み「同時にキウイをすくう(食べる)人数」でギネス記録も達成されています。
貴重なお話しの後には、キウイを使った新作スイーツなどをご提供いただき、参加者の皆さんは美味しく味わいながら、農業やビジネスモデルに関するさまざまな質問や相談を行っていました。

 

土壌状態の大切さを観察する穴から説明
ギネス記録の表彰状と皆で記念撮影

■株式会社ハマ/南相馬市

「航空宇宙技術をコアとしたテクノロジーで、わくわくする未来をつくりたい」というビジョンのもと、固定翼ドローンの開発・運用を行っている(株)ハマの花岡様より、今年5月の社名変更に込めた想いをはじめ、固定翼ドローン「ハマドリ」シリーズの技術的特徴、能登半島の被災地での活躍、今後さらに広がる用途・可能性、地元自治体との連携などについて、実物のドローンを前にご説明いただきました。

参加者の皆さんは、社名に込められた想いやイノベ地域(ハマという社名の由来である浜通り)で事業を続ける意義について深く感銘を受けていました。また、実機を前に子どもの頃のように目を輝かせながら、技術的な質問を次々と投げかけていました。

新社名「ハマ」にこめた想いを説明
実機に触れながらの質問タイム

■宿泊体験館きこり/飯舘村

飯舘村の村民の森(あいの沢)に位置し、目の前に大きな池が広がる「宿泊体験館きこり」にて、美味しい夕食をいただいた後、懇親会を行いました。ツアー1日目の訪問先で受けた感動の余韻が残る中、参加者の皆さんは、夜遅くまで各テーブルで熱く語り合っていました。

懇親会①いたるところで議論の輪
懇親会②自らのビジネスを熱く語る

【2日目】

■図図倉庫(ズットソウコ)/飯舘村

5年前に飯舘村へ移住した矢野様は、元ホームセンターの大型倉庫をリノベーションし、分野・地域・世代を越えて多様な人が集まり、飯舘村や世界が抱える環境課題、これからの地域環境づくりにアプローチする“秘密基地”として「図図倉庫」を立ち上げました。当日は、常設展示場を巡りながら、放射能の基礎知識、震災後に飯舘村へ研究者が集まりどのような研究活動を行ってきたか、宇宙の誕生から飯舘の今へとつながる壮大な視座、さらに、12月に開催される1051年創建の山津見神社例大祭の震災前規模(参拝者3万人)の復活に込めた想いなどについて、非常に分かりやすくご説明いただき、あっという間に時間が過ぎていきました。

参加者一同、無限に広がる思考と、それを実行に移す行動力に圧倒された1時間でした。

震災後15年ぶり例大祭完全復活の準備
土壌観測から、太陽フレアの発生の仕組みを説明する矢野様

■肉のユートピア(株式会社ゆーとぴあ)/飯舘村

全村避難期間中は避難先の京都の精肉店で修業を積み、2017年の避難指示解除後に飯舘村へ戻って家業の畜産業を再開したオーナー・山田様より、震災前に存在した黒毛和牛ブランド「飯舘牛」の復活に込めた想い、地域全体の復興への思い、そして牛の部位ごとの肉質の違いやこだわりについてお話しいただきました。

 

 
 
お肉を抱えながらお話しをする山田氏
牛の模型を使い分かりやすい説明

テラス石森/田村市

故郷の田村市に戻り、廃校を活用したテレワークセンター「テラス石森」で、田村市のまちづくり法人「(一社)Switch」とクリエイティブ制作会社「(株)Shift」を同時に立ち上げた代表・久保田様より、「田村市を未来と可能性が生まれる地域にする」「福島の可能性を価値にして続ける」ために、どのような活動を展開しているのか、実際に活躍する皆さんの紹介を交えながらお話しいただきました。

お話の後には施設内を見学し、地域に密着した活動の様子を肌で感じることができました。

参加者は皆、久保田様の言葉に引き込まれファンとなり、早速テラス石森への入居を検討し始める方もいました。

久保田氏から起業にいたったお話しを聞く
コワーキングスペースを興味深く見る参加者

■ふくしま医療機器開発支援センター/郡山市

大澤様より、福島県には医療機器関連メーカーが集積しており、医療用機械器具の部品等の生産金額が14年連続で全国1位となっていること、また開発支援センターの各施設や機能、助成金制度、マッチング制度などについてご説明いただきました。お話の後には、普段見ることのできない手術室をはじめ、最新設備が整った施設内を見学させていただきました。

今回のテーマが「医療」であったこともあり、開発支援センターへの関心や期待は高く、施設に入るなり多くのパンフレットを手に取る参加者や、具体的な質問を積極的に行う参加者の姿が見られました。

施設や助成制度の詳しい説明
手術室で大澤氏(中央)に質問する参加者

 

【参加者の声】

参加者の皆さまから、当日のアンケートやツアー後に当機構へお寄せいただいたメールなどを通じ、
たくさんのご感想を頂戴しました。その一部をご紹介します。

◆福島県の支援の本気度と、浜通り地区で事業に取り組まれている皆さまの情熱に触れることができ、たくさんの気づきをいただきました。

◆福島原発による土壌汚染問題や除染のことを全く知らなかったので、とても勉強になりました。

◆起業家を支援する体制がしっかり整っていて、自治体の本気度を感じました。入居企業が施設内で実証実験をしたり、トライしやすい環境が素敵でした。

◆失われた名産品を若者3人が復活させようとしている姿に感動しました。事業を受け継ぐ流れまで考えていて、令和版の取り組みだと感じました。

◆実際の事業内容に加えて、機体に触らせていただいたり、行政としてのまちの見え方も教えていただけたことが印象的でした。翼が想像以上に軽く、技術のすごさを感じました。

◆私自身農業にとても興味があり、ほぼ同世代の皆さんがキウイを育て、商品を開発している点にとても刺激を受けました。農業をしたいという気持ちにさらに拍車がかかりました。

◆若い方々と地域の皆さんが、倉庫を多目的な空間へと生まれ変わらせていた様子に感銘を受けました。とても刺激的な体験でした。

◆地元の状況をきっかけに、宇宙の起源や素粒子の世界を美術の視点で表現されていて、説明が大変分かりやすかったです。フィールドを持っている人が、研究者など人を巻き込んで活動するヒントを頂きました。

◆飯舘村の名産品であった「飯舘牛」を復活させようという想い、そして震災後に精肉店で修業し、現在は精肉店も営業されている点に感銘を受けました。

◆地域の中で求められる自分の立ち位置という視点を持たれていることが新鮮でした。

◆私から見たらとても大きな市(田村市)だという印象でしたが、その中でも活躍されている方をYouTubeで紹介する取り組みがとても先進的で、市が一丸となって前進している姿に感銘を受けました。小学校の跡地ということもあり、元々のぬくもりを活かしたリノベーションが人間味にあふれていてとても心地よかったです。

◆めちゃくちゃワクワクしました。施設は小学校の趣を活かしていて懐かしい気持ちになりました。これをきっかけに田村地域との繋がりを増やし、ゆくゆくはオフィスを置けるように展開していきたいと思いました!

◆OICをはじめ、スタートアップのハブになる場所があることの重要性を感じました。

◆質の高い医療機器開発支援が行われていることがよく分かりました。お願いしてみたいと思いました。

◆医療に関する製品の実験支援はもちろん、医療以外の機器の実験も受け付けている点に驚きました。福島で医療機器分野が盛んなことも含め、このセンターの重要性を理解できました。

◆ここまで環境が整っているエリアはそうそう無いと感じました。私は函館市での活動を続ける予定ですが、機会があればイノベ地域で活動してみたいと思いました。

◆いろんな人と話せてアイデアを交換できて、本当に楽しかったです。このイベントに参加してすごく良かったと思います。

◆イノベーション地域を知るきっかけになると思いますし、このツアーに参加したことで、浜通りの熱い方々とお話しでき、すばらしい刺激をいただきました。

◆様々な形で地域に貢献している姿を見て、知見が広まりました。この経験は非常に貴重だと思いますので、皆さんにはぜひ一度参加していただきたいです。

◆ツアーはとても丁寧に準備・運営されており、主催者の皆さま、企業の方々、地域の皆さまも親切で、貴重なご意見をいただくことができました。さまざまな地域や企業を訪問したことで、イノベ地域で事業を始める可能性について、より具体的なイメージを持つことができました。

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【お問い合わせ先】

(公財)福島イノベーション・コースト構想推進機構 産業集積部 事業創出支援課

    電話024-581-7045
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