震災関連絵本 作者ら特別対談

絵本「ぼくのうまれたところ、ふくしま」の著者・松本春野さん、絵本「失われたバラ園」の作家・はかた たんさんによる特別対談は11月3日、当館で行われました。福島大学特任教授でうつくしまふくしま未来支援センターこども支援部門副部門長の本多環さんが進行役を務め、3人は絵本が持つ魅力や親子のコミュニケーションツールとしての役割、震災伝承における絵本の効果などについて意見を交わしました。

初めに松本さんと、はかたさんがそれぞれの絵本のあらすじを紹介し、絵本への思い入れを語りました。

【写真説明:絵本の魅力を語る松本春野さん】

松本さんは絵本作家の祖母いわさきちひろさんらの作品を取り扱う絵本専門美術館が自宅近くにあり、そこで「生まれ育った」と言います。絵本を「言葉が伝わらずとも、絵で物語ることができる。言葉や文化、国や民族を超え、0歳から100歳までが楽しめる文化」と紹介。読み聞かせを通じて親と子のふれあいにつながる「コミュニケーションツール」とも表現しました。

「ぼくのうまれたところ、ふくしま」以外にも震災や東京電力福島第一原発事故に伴う避難の物語を描いており「絵本は難しいことを子どもに伝えるのに適している。大人が解説しながら読んであげてほしい」と参加者に呼びかけました。

【写真説明:絵本制作に至るまでの思いを話す はかたたんさん】

「東日本大震災から、『お前さんの一番大事なものはなんなの』と言われた気がした。普通の生活の大切さを痛感した」というはかたさん。震災と原発事故に伴い、50年かけて築き上げた双葉町のバラ園を失った園主・岡田さんを取材し、「バラを愛し、バラと話すことができた」という岡田さんの悲しみや、感銘を受けた点を共有したいと思ったそうです。はかたさんは「何もしなかったら、一部の人の記憶にしかならない。絵本という一つの形になれば残していける」と、制作に至りました。

「絵本は優しいメディア。子どもが考える力を養える。バラの気持ちになって考えることができる。想像は、創造に結びついていく」と絵本が子どもに与える影響について語りました。

【写真説明:震災伝承における絵本の役割について話す本多環さん】

本多さんは「たくさんの絵本に触れる中で子の感性や思いやる心が育っていく。震災に関する絵本を読んで、人の心の痛みや傷付いた人をどう受け止めるかという優しさをはぐくむことが、長い目で見れば震災を伝承することにつながると感じた。いつまた大災害を経験するか分からない。被災した人の気持ちを想像できるようになることで支援にもつながっていくのではないか」とまとめました。