英語版フィールドワーク初実施
東日本大震災・原子力災害伝承館は2026年3月12日、バスで被災地を巡る研修メニュー「フィールドワーク」の英語版を初めて実施しました。外国人向けに旅行に関する案内を行う「地域通訳案内士」の資格を持つ講師が、震災と東京電力福島第1原発事故による双葉町と浪江町の被災地を英語で案内しました。
外国人団体客やインバウンド対応の一環で導入しました。以前は通訳者を手配できない外国人の団体向けには実施できませんでした。予約団体が通訳者を確保できた際も、逐語訳に時間がかかることに加えて、地名や震災と原発事故関連の普段使わない用語を伝えるのに苦労していたこともあったそうです。講師が通訳者を介さずに英語で話すことによって、伝える内容が詳しくなるほか、予約団体の負担が減る利点があります。
この日、英語版フィールドワークに参加したのは、同日伝承館で開かれた「長崎大学F-REI国際シンポジウム」の出席者7人。ドイツなどから訪れた放射線疫学の研究者や、 長崎大大学院のカザフスタン、ケニア出身の留学生が受講しました。
福島県の地域通訳案内士として登録されている大谷留美子さんが講師を務め、バスに同乗。「地震、津波、原発事故が起きた土地であることを想像しながら参加してください」と語りかけ、「双葉町は震災前、約7000人の町でしたが、3月12日に原発事故により県内外に避難しました。今何人が戻っていると思いますか?想像してみてください」など、参加者に質問する場面もありました。「ハンドレッド(100人)?」と答える参加者に 「とても近い。約200人が居住しています」と答えた。
沿岸部の浪江町請戸地区を見渡すことができる大平山霊園では一時的に下車し、津波犠牲者の慰霊碑の前で被害を伝えました。請戸小学校の児童が山を超えて内陸に避難し、全員が助かった経緯を紹介。一方で、原発事故により沿岸の行方不明者捜索や救助ができず、助けられるはずだった命が奪われたことも伝えました。
参加者は大谷さんの地震、津波、原発事故という複合災害のガイドを真剣なまなざしで聴き、止まらない涙を拭う人もいました。
JR常磐線双葉駅周辺ではスーパーや、飲食店など、町内への帰還開始後に整備された施設を紹介したほか、閉ざされた双葉厚生病院、除染土壌の中間貯蔵施設などについても説明しました。
長崎大学大学院災害・被ばく医療科学共同専攻(修士1年)のアナスタシア・ミラーさん(24)は「実際に被災地を目にして、生死を分ける境目はあまりないということを感じ、とても重く、胸に響くものがありました。新しいお店やコーヒーショップができているのを見て希望も感じました。ここで聞いたお話を災害を経験したことのない人たちに共有したいです」と語りました。
大谷さんは「外国の人にまちの様子を見て、感じていただくことはとても大切。私たちはここにいて、震災から15年。みんなそれぞれのストーリーがあることを日本人だけじゃなくて、海外の人ともシェアして、話をしたいです。日本人とは違う意見や価値観を共有しながら、地域の新しい未来を創造したいです」と語った。
高村昇館長は「伝承館の目的は福島の知見、教訓を国内外の防災・減災に役立てること。外国から来ていただくのは非常に重要。国内外を問わず、震災と原発事故について知らない若い世代が増えています。伝承館での体験をそれぞれの国の防災・減災に役立てる取り組みに生かしてほしいですね」と期待を込めていました。
伝承館の外国人来館者数は全体の約5.5%となっています。英語版フィールドワークは随時予約を受け付けています。



